マーケティングの巨星たちが教える、21世紀型マーケティングとは

「マーケティングで世界をより良く」をスローガンとする、ワールド・マーケティング・サミット発起人のフィリップ・コトラー教授のインタビューなどを紹介します。

ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン編集部

第一回:大ベストセラー「ブランディング22の法則」著者が教える、ブランディングとイノベーション

 

皆さんこんにちは、ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン編集部です。

 

本コラムでは、9月24日・25日に開催される、マーケティング国際会議「ワールドマーケティングサミットジャパン2014」にあわせ、「現代のマーケティングの父」として知られ、同サミット発起人のフィリップ・コトラー教授のインタビュー、アメリカでブランディングコンサルタントとして名の高いローラ・ライズ氏の講演等を紹介していきます。

 

第一回目は、ローラ・ライズ氏の講演の書き起こしを「マーケティングホライズン2014年6号」から引用し、紹介させて頂きます!

 

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初めに

私の大好きなトピック、ブランディングに関してお話をします。イノベーションのためのステップワンは、イノベーティブな製品を作ること。これが一番重要なのでしょうけれども、それだけで良いのでしょうか。イノベーティブな製品をつくるだけで成功する企業になれるでしょうか。

私がお話したいのは、2番目のステップ。2番目のステップとは何かというとイノベーションのブランディング、ブランド化です。イノベーションを成功させるために、これは非常に重要なことです。
いくつかの事例で、お話をして行きましょう。

 

最初の法則

イノベーションのブランディングの最初の法則は、ブランド名はシンプルなものでなければいけないということです。それでなければ上手くいきません。

 

「ミッツ アルテア 8800」と「Apple」。二つのPCのブランドのどちらにイノベーションがあるでしょうか。シンプルな方がいいのです。「クリエイティブノマドジュークボックス」、シンプルじゃないですよね?iPod、シンプルです。

 

グローバルなパッケージグッズのリーダーは多くのブランドを持っています。ダノンの32と比べると、ビリオネアのブランドは25程度ですが、それでも毎年巨額の売上を上げています。ブランドネームを見てみると10億ドルを売上げるブランドはすべてシンプルで簡単な名前です。8文字以上のものは1つしかありません。皆さんのブランドを考えてみましょう。シンプルですか?それとも複雑な名前がついていませんか?平均的なブランド名はアルファベット5文字なのです。

 

2番目のブランディングの法則

二番目の法則は、これも私の好きな法則でして、フォーカスを当てろ、ということです。フォーカスはできるだけ絞り込む、ということが必要です。

 

例えばスバル。スバルは四輪駆動車のパイオニアでした。アメリカの北部のほう、非常に雪が降ります。でも私が住んでいる南部のほうでは四輪駆動なんて要らないわけです。ですからスバルは2つのアプローチ、北部のほうには四輪駆動車、そして南部には二輪駆動車を実施しました。こうした2つのフォーカスを出して、1993年に二輪駆動車が販売量の52%、四輪駆動が48%という構成比でした。実はその間会社は2億5000万ドルの損を出しており、そしてまた販売も14億ドルも減ってしまったのです。そこで社長が交代し、二輪駆動車をやめてしまい四輪駆動車に集中したのです。集中して、ブランドを創り上げて、そして成功しました。二輪駆動車の生産を止めたのですから、一時的に少し売上は減りましたけれども、販売はどんどんと回復し始めました。

スバルを持っているということは何か特別な意味を持つということなのです。1993年にはたくさんのバラエティーに富んだ車を持ちながら、売れたのは107190台だけでした。2013年には四輪駆動車のみで424683台も売れました。300%も増えたわけです。そのときに自動車市場も拡大したのではと思われるかもしれませんが、そうではありません。同じ期間自動車市場は12%しか拡大していません。でも、スバルはこれだけ売れた。これは集中したからです。

 

3番目のブランディングの法則

ブランディング三番目の法則は、カテゴリーはブランドよりも重要だ、ということです。人々が気にするのはカテゴリーなのです。ブランドはそれを表現する手段にすぎないのです。あるいはカテゴリーを捉える・感じるという表面的なものにすぎないのです。ブランドというのは氷山の一角のようなものです。氷山は非常に大きいけれども、水面にほんの一部しか出ていない。でも、氷山のほとんどは水面下にある。それがカテゴリーです。

 

もし任天堂がブランドだとするならば、氷山は何でしょう。任天堂が持っているカテゴリーは何ですか。ビデオゲームですよね。ビデオゲームがカテゴリーです。私の息子も大好きです。任天堂が好きなのではないのです。ビデオゲームが好きだから、任天堂を使っているのです。

イノベーションがあって、ブランディングと繋がったら、カテゴリーをしっかりと支配したら、最強になれるかもしれません。
コダックはかつて世界のベストブランドでした。カテゴリーはフィルム写真。今ではもうデジタルに完全に移行しています。フィルム写真が消えて無くなくなる時、選択の余地は二つしかありません。コダックのブランドを、デジタルコダックとでもするか、あるいは二番目のデジタルブランドを新たに設置するかです。ところがコダックはブランドを残そうとしました。コダックがデジタルの写真に変わったと人々の考え方を変えるのは殆ど不可能でした。コダックはその結果、破産申請ということになりました。では、デジタルカメラを発明したのはコダックだと言ったらどう考えますか。1986年、デジタルカメラを最初に出したのはコダックです。ここに新しい名前を付けていれば、救われていたかもしれません。

 

4番目のブランディングの法則

四番目の法則です。真ん中に残るのは避けろ、ということです。例えばある商品が最初に出てくるときは単一の商品で、ひとつの価格でしか出されません。でも、だんだん時間が経過すると、カテゴリーは広がっていきます。シンプルで小さくて安いものを出すところも出てくれば、もっと高くて大きくて複雑なものを出すところが出てくるでしょう。プロセスは最終的にこうしたカテゴリーが無くなるまで、あるいはそれが二つのカテゴリー、三つのカテゴリーに分かれるまで、これは続きます。これに対応しなければいけません。

 

こうした分断が起こったらどうなるか、ということですが、もっと分かりやすくお話をしましょう。真ん中にいる、というのが最悪です。消費者は一番安いものかあるいはベストなものか、どちらかが欲しいのです。ロレックスが欲しい、レクサスが欲しい、あるいは最も安いもの(cheapest)が欲しい。消費者の中で「もう中間のもので良いよ」って言う人はいないでしょう?あまり安くもないし、あまり良くもないものが欲しいって言うような消費者がいますか?聞いたこともありませんね。そういう風に消費者の頭は動きません。

 

5番目のブランディングの法則

ブランディング五番目の法則、集中です。どんどんブランドを拡張させるよりも、どんどんブランドをストレッチさせるよりも、新しいブランドを始めなさいということです。シボレーが電気自動車を始めたいということになった。そうしたら新しいブランドをやればいい。イノベーションをどんどん取り入れて、ブランディングを組み合わせていくのです。実際に利益を上げている会社というのはカテゴリーを支配するようなブランドを持っているものです。P&GやAppleのように、それからネスレのように、トヨタもそうです。multiple brand、複数のブランド、それがカテゴリーを代表することになり、あれだけの大きな成功を収めたのです。皆さんの国、次のそのアキュラになるのかそれともネスレになるのか、それが決まっていくのです。

 

(日本マーケティング協会「マーケティングホライズン2014年6号(リンク)」から引用)

 

 

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以上、ローラ・ライズ氏の講演書き起こしのご紹介でした。実際の講演では、200枚近いスライド資料を元にプレゼンをされたとのこと。
そのローラ・ライズ氏の二つのセッションにおけるモデレーターぶり(何とそのうち一つは、父親である巨匠アル・ライズ氏も出演)を見られるのが、今回開催されるイベント「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン 2014」です。

 

9月24~25日の2日間、世界各国のマーケティングの第一人者が集結する「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン 2014」。
日本の最新マーケティング事例を含むケーススタディや、世界各国から招く著名なスピーカー達によるディスカッションなど、広告・マーケティング業界にいる方必聴のコンテンツが多数用意されているとのこと。

 

今回、広告ニュースで本コラムをご覧頂いている方にも、参加費用2万円引きの特典をご用意頂きました。以下に詳細を記載させて頂きます。ご興味がございましたら是非お申込みください。

 

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日程:2014年 9月24日(水)10:00~18:45(予定)
        25日(木)9:30~17:40(予定)
会場:グランドプリンスホテル新高輪「北辰」
登壇:フィリップ・コトラー
   デビッド・アーカー
   アル・ライズ
   ドン・シュルツ
   高岡浩三(ネスレ日本代表取締役社長兼CEO)
   新浪剛史(サントリー顧問)
   吉田忠裕(YKK代表取締役会長)
   魚谷雅彦(資生堂代表取締役執行役員社長)ほか

参加お申し込みはこちら:
→ https://ssl.worldmarketingsummit.jp/apply/
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