【特集】ベネッセコーポレーション「こどもがいて、よかった」キャンペーン ~Twitter活用の狙いとその背景にあったもの~

今年4月、株式会社ベネッセコーポレーションは、渋谷駅のホームにTwitterと連動した「こどもちゃんじ」のポスター広告を掲出した。このキャンペーンは、Twitterの同社キャンペーンアカウント「@kodomo_happy」で、「こどもがいて、よかった」というエピソードを募集。投稿されたつぶやきがシールとなり、掲出されたポスターに毎日少しずつ張り出されていくというもの。キャンペーン終了直後に『広告ニュース』(http://www.findstar.co.jp/news/syosai.php?s=201281)でも取り上げたところ、多くの読者に意外性を持って受け取られたようだ。ベネッセコーポレーションといえば、レスポンス重視のダイレクトマーケティングという印象が強い。その同社が、今回のキャンペーンでは、なぜ反響が測定しにくいTwitterを利用したのか。その背景について、同社 教育事業本部 幼児商品開発部 部長 橋本英知氏、こどもちゃれんじすてっぷ編集長 川端宏美氏の両名にお話を伺った。


こどもちゃれんじすてっぷ編集長 川端宏美氏

■社会に対するメッセージとして、年度末に交通広告を実施
「こどもちゃれんじ」のプロモーションは、レスポンスが測れるダイレクトメールを中心に行われる。認知拡大やイメージを作るという意味で、テレビCMやウェブサイトも利用するが、最終的にはダイレクトメールに落としていく展開が基本。実にマーケティング予算の約8割がダイレクトメールに投入されているという。レスポンスを極めれば極めるほど、マス広告やイメージ広告はなくなりがちな傾向というが、年度末の交通広告は、毎年必ず行なっている。今回のキャンペーンも恒例となっている交通広告の一つであった。
「弊社は教育事業を行っているので、社会に対して、ある程度メッセージを出していく責任があると考えています。海外、特に北欧は、社会で子どもを育てていこうという意識が高いと思うのですが、日本の場合は逆。昨今は個人情報保護の問題などもあり、子育てがその家庭だけ、母子だけというように閉じていく傾向にあります。もう少し、社会で子どもを育てていこうという意識が外にも伝わる必要がある。年度末の交通広告はそんな思いから行っています。ですから、通常、弊社が行っているマーケティングとは少し性格が違うのです。今回のキャンペーンは、Twitterという新しいメディアを使ったことで話題性も出て、さまざまメディアに取り上げてもらう結果となりました。そういう意味でも成功だったと考えています」(橋本氏)

■Twitter上でのつぶやきも含めて、企画・制作はすべて社内担当者が行った
Twitterを利用するというアイディアも含めて、具体的な企画・制作については川端氏が担当した。「@kodomo_happy」のアカウントでつぶやいていたのも川端氏である。
「企画を考え始めた3月の頭の時点では、主要な駅に駅張りをするという大枠だけが決まっていて、誰に何を届けるのかという部分は白紙でした。編集部では、アンケートや座談会を通して常にお客様である講座会員の声を聞きながら商品を開発しています。その中で、子育て中の方のリアルな声に感動する機会が多くあって、そうした声こそが不特定多数の人の心に響くはずと考えました。もともと販促がミッションではなかったので、通常私たちがターゲットとしていない、まだ子どもがいない若い層の人たちにも興味を持っていただけるように、Twitterを使ったり、日々変化していくような仕掛けを作ったりしました」(川端氏)

つぶやきの募集告知は、マイクロアドに一部バナーを出した以外は、すべて自社メディアを使って行われた。告知から締切りまでは1週間。ポスターには全部で97件のメッセージが掲載されたが、最終的には120件のメッセージが寄せられたという。
「Twitterであれば短い期間でもできると思ってはいましたが、たった1週間で97件のメッセージが集まるのかという不安もありました。でも、実際には狙い通りに、一つひとつが深くて心を打つメッセージを集めることができました。参加してくださった方には本当に感謝しています。掲示した中には、実はスウェーデンから寄せられたメッセージもあります。ポスターの掲示は渋谷駅ですが、Twitterを使ったことで、メッセージそのものは日本中、世界中の方に見ていただけるものになりました」(川端氏)

また、Twitterは140字という文字制限があるために、エッセンスが凝縮された強いメッセージを集めやすいということにも気づいたという。
「通常であれば、ネットや手紙でアンケートを送って、書いてもらったものを編集するのですが、あれだけ短い文章になると、情報量がそぎ落とされているので、編集なしでもいいコピーが多いと感じました。また、ミクシィのように出来上がったコミュニティに対してテーマを出していくのではなく、こらち側でテーマを置いた上で集まってくる関心度が高い人たちなので、テーマとの距離感という部分でも強いコピーを生み出す力をもっているのではないかと思います」(橋本氏)

■キャンペーンアカウント「@kodomo_happy」の今後について
「@kodomo_happy」は同社として初のTwitterアカウントだが、あくまでも期間限定で行われた今回のキャンペーンに付随するものだという。キャンペーン終了後も結果報告がつぶやかれていたが、今後はどうなっていくのか。
「今、フォローしてくださっているお客様は大切にしていきたいと考えています。具体的にどう活用していくのかは社内で調整しながらという段階ですが、ここで積極的に販促をしていくのは難しいかもしれません。販促利用というよりも、編集部とお客様とがコミュニケーションしながら商品を作っているというのを象徴するような、『こどもちゃれんじ』というブランドに対する安心感が持てるようなアカウントになれたらいいと考えています」(川端氏)

■今後、同社はソーシャルメディアをどのように活用していくのか
今回は、あくまでも期間限定のキャンペーン単体としてTwitterを利用したが、会社としてソーシャルメディアをどのように活用していくのかは、今まさに検討段階。レギュレーションを作成している最中という。
「先ほどの“子育てが閉じている”という話とつながるのですが、子どもたちをもっと肯定的に見られるような情報をどこまで出していけるのかというのは、弊社や『こどもちゃれんじ』における使命だと思っています。今はダイレクトマーケティングで弊社と会員だけのやり取りとなっているのですが、ソーシャルメディアは、子どもたちの周りで何が起きているのかをライトに経験する場、知る機会を作れるメディアだと考えています。そういう意味で、ユーザーのほうにある体験を編集して新たな価値を作り、それを外に飛ばしていくという発想で利用していくことになるでしょう。具体的にどのソーシャルメディアを利用していくのかという部分は、おそらく複合的に、マスも含めたいろいろなメディアを使っていくことになると思います。ただ、何か具体的にささないソーシャルメディアというものに対して、広告を出したり、販促をしたり、商品開発をしたりは、今後もっと増えていくと思います」(橋本氏)

■Twitterの企業活動への活用は、まだ試行錯誤の段階
今、企業活動にTwitterを活用する動きは加速している。無料のアカウントさえ取得すれば即座にはじめられる手軽さと、RT機能によって瞬く間に話題を広げることができる点が注目され、販売促進活動に利用されるケースが多いようだ。すでに導入している企業の多くはその効果を実感しているとされるが、効果の測定方法については曖昧なままだ。また一方で、今回のベネッセコーポレーションのキャンペーンのように、消費者の声や意見の吸い上げに利用していこうという動きもみられるようになってきた。
いずれにしても、オープンな場で企業が消費者と直接つながることのできるメディアは、これまでなかった。各企業は、試行錯誤しながらその用途や使用方法を模索している段階といえるだろう。(編集部/宮崎規江)

■今回ベネッセ様のお話をセミナーで聞きたい!という声を是非Twitterで@findstar_newsまで!(またはこの記事のRTを!)
沢山の声をいただければ、セミナーを企画します!