数字は語る!マーケティングリサーチャーが読み解く最新消費者トレンド

インターネットリサーチ国内No.1の実績を誇り、日本のマーケティングリサーチ業界を牽引し続けているマクロミル。
リサーチャーの在籍数も国内随一の同社で、すべてのリサーチャーを統括している芦沢広直氏が、豊富な経験とオリジナリティ溢れる独自の視点で、リサーチデータから消費者トレンドや変化の捉え方を紹介する!

株式会社マクロミル 執行役員
芦沢 広直

第1回:スマートフォンの普及がインターネット利用にどのような変化を与えたのか

インターネットの利用実態についてマクロミルで毎月定点で実施している自主調査の結果が今月も出た。
改めて今月の結果を見ると、この1年、スマートフォンの普及によりネットとの付き合い方に変化がみられるのでまとめてみた。

 

■スマートフォンの普及に伴いアドオンされたインターネットの利用時間

<図1> インターネットの利用機器 (対象:全国15-59歳一般男女)

 

 

 

「インターネットを普段どのような機器で利用しているか」に対する回答結果を見ると、この1年間スマートフォンの利用が急速に伸びている。
一方、携帯電話・PHSのスコアは大きく下がっており、このあたりはトレードオフの関係と見ることができる。
パソコンの利用率も高く、依然として主要なデバイスの地位を維持しているが、これはネットリサーチの調査結果であり、高めの結果になる特性を考慮しなければならない。

 

<図2> 各デバイス別1日当たり利用時間と用途

 

 

 

また利用端末ごとの1日あたりの平均利用時間の推移にも注目してみた。
デスクトップパソコン利用者のネット利用時間は平均2時間30分、ノートパソコンでは2時間18分でこの1年間ほとんど変動はなかった。また利用目的もネットサーフィン、メール、ネットショッピングなどの主要項目にも変動はなく、パソコンについてはこれまでどおりの付き合い方でこの1年間大きな変化は見られなかった。

 

一方のスマーフォンはどうだろう。
スマートフォンはこれまでの携帯電話・PHSと比べると2倍近くインターネットを利用する時間が増える。
しかも、1日あたりの平均利用時間は10月単月の前年比較でこそ4分の増加にとどまるが、1昨年以降の変化でおいかけると利用時間は着実に増加傾向にある。
ベースとなる利用者が急激に拡大していることを考慮すると世の中の人々がインターネットを利用している総時間はスマートフォンの普及によってさらにアドオンされたと
見ることができる。

 

 

 

■SNS・ブログに接する機会が増加

ではどのような利用用途が拡大したのか。
スマートフォンによるインターネット利用目的をみるとパソコンと同様にネットサーフィン、メールが上位にあげられているがこれらはこの1年間で大きな変動は見られなかった。
また、動画・音楽の視聴やオンラインゲームなどのエンターテイメントやネットショッピングなどの用途も顕著な伸びは見られず、パソコンの利用率の水準には達していない。

 

そうした中、SNS・ブログの更新・閲覧だけは着実に伸びている。
直近ではスマートフォンによるネット利用目的においてはネットサーフィン・メールに告ぐポジションになっており利用している時間が生活時間の中でも増えているのではないかと想像できる。

  

  

■狭く、深く、リアルタイムの情報に常時接するようになった先には

SNSやブログで接触する情報は自らの興味で選ぶことができ、友人知人の今日の出来事や自分の仕事や趣味に関する詳しい情報、よく買物をするショップの最新情報など自分にとって関わりの深い内容の割合が当然のことながら大きい。

 

そうした自分向けの「狭く、深く、リアルタイムの」情報が乱舞している世界で過ごす時間が増えて定着すると、テレビや雑誌などを通じたマス向けの「広く、浅く、編集された」情報に物足りなさを感じてしまうのは抗うことのできない流れのように思う。

 

また、スマートフォンを通じて昼夜新しい情報に接している状態は、知りえた情報についてあれこれ考えたり、記憶する時間が確保されなくなってしまう分、「買いたい」欲求を記憶させ実際の行動の場面まで持続させることが難しくなってくる。

 

自分自身、今朝読んだ朝刊のテレビ欄で「あ!これ見たい」と思った番組のことを帰宅時まで覚えていることは昔に比べて少なくなったような気がする。

 

メッセージを伝えるプランナーにとってはコミュニケーションデザインの腕の見せ所ではあるが、われわれリサーチャーにとっては記憶に頼らない意識情報の収集ノウハウがますます重要に成ってくるのかもしれない。

 

【調査概要】
マクロミルにて2010年11月より毎月実施している定点調査。変化の激しいインターネット利用の最新動向を調査している。

■今回調査(第23回)の概要
●調査対象:マクロミルモニタ 15歳~69歳の男女 (平成22年度人口統計比に合わせて回収)
●調査地域:全国
●調査方法:インターネットリサーチ
●調査時期:2012年10月19日(金)~10月23日(火)
●有効回答数:2,171サンプル
※毎調査とも2200サンプルの回収を行っておりますが、データクリーニングをしているため有効回答数にばらつきが発生しています。

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