マルチスクリーン時代の消費者行動を探る

 PC、スマートフォンにとどまらずタブレットやTV、ゲーム端末など様々なデバイス(スクリーン)がインターネット接続機能を持つようになり、消費者がインターネット上のコンテンツやサービスを利用できる環境が劇的に変化しています。

 トリプルスクリーンとよばれる、テレビ、PC、モバイルという組み合わせを考えるにとどまらず、より広い視野を持って消費者のデジタル行動のトレンドを把握することが、今後ますます重要になってきます。いったい消費者は、「どのスクリーンから」「何を視聴し」、「どんなサービスを利用」しているでしょうか?本コラムではニールセンが行ったマルチスクリーン(7つのスクリーン)の利用動向調査「デジタルコンシューマーデータベース」をもとにスクリーンとコンテンツの関係を探っていきたいと考えています。

中村 義哉

第1回:マルチスクリーン時代の消費者動向

 

 33%。この数字が何を意味しているかご存じでしょうか?総務省が発表した平成23年通信利用動向調査で発表されたインターネットに接続できるテレビの世帯普及率です。では、この33%の世帯の内、一体どのくらいの世帯が実際にインターネットに接続しているのでしょうか?同じ調査では4%が実際にインターネットを利用しているという結果が出ています。同じく77%の世帯にはPCが普及しており、弊社のインターネット視聴率(Nielsen NetView)によると平成24年9月の家庭のPCからのインターネット利用者は5127万人になります。さらに、スマートフォンの世帯普及率は平成22年の10%から29%へと一年間で3倍と大きな伸びを示しており、今年はさらに普及が進んでいることは容易に想像できます。またiPadの登場によりタブレットが普及し始め、Amazonや楽天に代表される電子書籍リーダーの存在感も増してきました。今ではゲーム機までもがインターネット接続が出来るようになっています。 このように、現在では様々なデバイスがインターネット接続機能を持つようになり、消費者がインターネット上のコンテンツやサービスを利用するためのデバイスの構成要素に大きな変化が訪れています。消費者は当たり前のように複数のスクリーンを通し、コンテンツを利用しています。一方、提供する側も同一のコンテンツを複数の機器から利用できることを前提にサービスを展開することが多くなってきました。
 トリプルスクリーンとよばれる、テレビ、PC、モバイルという組み合わせを考えるにとどまらず、より広い視野を持って消費者のデジタル行動のトレンドを把握することが今後ますます重要になってきます。弊社では本年度より、スクリーン(デバイス)とコンテンツ(サービス)の両面から、その利用状況を調査することで、現在の消費者が、「どのスクリーンから」「何を視聴し」、「どんなサービスを利用」しているのかを明らかにするための基礎調査データ「デジタルコンシューマーデータベース」の作成を開始しました。
本コラムではその調査結果をもとに消費者のスクリーンとコンテンツの利用動向を探っていきたいと考えています。

 

 第1回目の今回はスクリーンの保有状況と利用実態を俯瞰的に見ていきたいと思います。

 

 図表1は本調査結果を基に各スクリーンの保有率をみたものです。PC、テレビは9割以上、従来型携帯電話が約7割、携帯ゲーム端末とスマートフォンが3割と続いています。タブレット、電子書籍リーダーに関してはそれぞれ10%、3%と最近よく話題に上るスクリーンですが、保有率はそれほど高くありません。この2つのスクリーンに関しては来年以降の動向に注目していく必要がありそうです。

 

 図1

 

 では、各スクリーンはどのように利用されているのでしょうか?まずは1日当たりの利用頻度をみてみます。1日4回以上利用すると答えた割合が最も多かったスクリーンはスマートフォンで約8割、次いでテレビ、従来型携帯電話、PCが約4割。以下、タブレット、電子書籍リーダー、携帯ゲーム端末が続いています。スマートフォンの保有割合は、テレビ、PC、従来型携帯電話よりも低くなっていましたが、1日4回以上利用する人の割合はそれらの2倍ほど高くなりました。スマートフォンは保有者にとって、他のデバイスよりも身近で日常に密着したスクリーンといえます。

 

 図2

 

 では、利用時間ではどうでしょうか?各デバイスの平日1日当たりの利用時間を見ると、4時間以上の割合がもっとも高かったスクリーンはテレビ、次いでPC、スマートフォンとなっています。休日になると、テレビやPC、タブレットの4時間以上の割合は増加しますが、スマートフォンは、ほぼ横ばいとなっています。スマートフォンは平日と休日でその利用方法は大きく変わらないことが分かります。

 

 図3

 

 次に消費者の時間帯別でのスクリーンの利用動向を見ていきます。

図表4は一日の時間帯を大きな時間枠でとらえ、起床から就寝までの間、それぞれの生活シーンでの各スクリーンの利用状況をみています。全体では、朝はほとんどの人がテレビをつけ、日中は外出中や空き時間にスマートフォンや従来型携帯電話が活躍。帰宅以降就寝までは、テレビ、PCの利用が多いことが分かります。

 

 図4

 

では、性年代別ではどのような特徴があるのでしょうか、今回は特に特徴がみられた10代女性にフォーカスしてみました。彼女たちの生活シーンにおけるスマートフォンの利用率は、ほぼ一定の割合で推移し、1日を通して途切れることがありません。特に就寝直前までスマートフォンと接している状況は特筆すべきです。若年層のスマートフォンへの依存度は高まっており、10代女性をターゲットにする場合は、このスクリーンを無視してマーケティングを行うことは出来ないことが分かります。

 

 図5

 

最後に各デバイスの利用用途を見ていきます。図表6は消費者がそれぞれのスクリーンをどのような場面で利用しているのかをみたものになります。特徴的なデバイスのひとつはテレビで、能動的な番組の視聴、及び、いわゆる「ながら視聴」において最も利用度合いが高いですが、他の用途で使われることはあまりありません。前述していますが、テレビからのインターネット接続をするという状況は、まだ一般的にはなっていないようです。一方、PCは情報検索(Search)を軸に、動画・音楽を楽しむ、メール、SNS等に使われるなど、用途が広いことが特徴的です。スマートフォンも利用用途は様々ですが、それに加えて「常に持ち歩いて何かにつけて使用」している状況をしっかりと認識しておく必要があります。消費者はちょっとしたスキマ時間や思い立ったときなど、スマートフォンを通して、様々なコンテンツ、サービスを利用しており、それは場所を問わず行われているのです。もはや電話ではなく、消費者と常に行動を御共にしている小型のPCであると考えたほうが、スマートフォンに向けたコンテンツ、サービスの提供の幅が広がると思います。

 

 図6

 

 では消費者はそれぞれのスクリーンをとおして、どんなコンテンツやサービスを利用しているのでしょうか?次回以降スクリーン×コンテンツの組み合わせを性年代別などで詳しく見ていきたいと思います。

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