その広告、本当に効いている?「売り」につながる「広告効果測定」「ROI分析」とは

広告効果測定の専門機関として25年目を迎える株式会社テムズ。

広告主でも広告代理店でもない「第三者機関」として、客観的な視点だからこそできる「次の打ち手につながる広告効果測定」の考え方と手法を紹介します。

本コラムを担当する株式会社テムズ代表取締役鷹野義昭氏の1000素材を超えるCMキャンペーン分析の知見とノウハウは、広告の費用対効果の「見える化」にお悩みの担当者にとって必見の内容です。

鷹野 義昭

第1回:いまの広告効果測定。頼れますか?信じられますか?

 

■ あなたの立場では、広告宣伝費をどう捉えていますか?

 「経営者はコスト?」「広告担当者は予算?」

社長をはじめとした経営者は「広告」を経営資源としてのコストとして考えますから、できれば圧縮したいと思うでしょう。このご時世、「コスト削減」の大命題は、当然ながら宣伝担当部署へと降りかかってきます。宣伝担当者は、「予算を減らされ、広告で思ったことができない」と落胆することでしょう。

ここで、もしあなたが宣伝担当者だったら、会社全体におけるコストの捉え方を「高見」から持てるかどうかが大きなポイントとなります。社長から重要な地位と考えられている宣伝担当者として、広告を「予算」ではなく「コスト」としての意識が有るか無いかは、会社の人事評価として重視していることは間違いないでしょう。

例えば、清涼飲料水で5億円の広告キャンペーンを実施し、投資金額をペイするためには、単価120円、利益10%と仮定すると、4,000万本以上売れなければなりません。国民の約3人に1本買ってもらう。とてもハードルは高いですね。しかもそれで広告費とイーブンの関係なのです。

では、コストは削減することだけが、有効な判断なのでしょうか。そう、当たり前の話ですが、投資コストを「生き金」にするか「死に金」にするかが問題なのです。
つまり、本当に効果のある広告宣伝費ならば、経営者も宣伝担当者も胸を張って増額すれば良いのです。
でもそのためには、その効果の「客観的な根拠と実績」が絶対的に必要になるのです。

■ 担当広告代理店から「効果がないから今後は広告をやめたほうが良い」

 と言われたことはありますか?

このコラムを読まれている広告代理店の方も多いかと思います。
「何をそんな!バカなことを!」と思ってください。本当にバカげた話です。

広告代理店に入社したての私自身も、そんな言葉は言えませんでした。だから今の会社をつくって、正しいと思えることを企業にアドバイスしているつもりです。でも、今だから思うのですが、広告代理店から「この広告を継続すべきではない」と提案されたら、真のパートナーとしてどれほど信頼できることでしょうか。

冒頭、広告宣伝費を「経営者はコスト」、「担当者は予算」と捉えると書きましたが、ここに「広告代理店は売上(バジェット)」と捉えることを付け加えなくてはいけません。

「価値がわからんやつは買ってくれるな!」という商売は世の中にたくさんあります。ちょっと話はそれますが、先日ゴルフクラブを買い替えようと店に行ったら、こちらは新しいのが欲しいのに店員は「今ので十分」の一点張り。(きっと、私の腕前では使いこなせないと判断されたのでしょうか)その後、その店員さんとは、とても長いお付き合いとなっています。「必要ないモノを必要ない」と言ってくれる人は、すぐに信用度があがるのではないでしょうか。
そんな広告代理店が世の中に増えていくことが理想と思っています。いや、チラホラと出てきた気もします。

それからもうひとつ、もしあなたが、広告宣伝担当だとしたら、自社の経営サイドに「この広告宣伝費は必要ありません」と言えるでしょうか?
私は、現実にそんな有能な宣伝担当者を何人か知っています。広告効果測定調査という客観的な判断のもと、その広告予算を、別の商品の広告へ有効に振り向けていくというパターンです。
もちろん、その宣伝担当者は、経営者から絶大なる信頼を得ています。

■ 曖昧にすることが長い目で見て「HAPPY」ですか?

広告代理店と苦労し時間をかけつくりあげた広告を、自身で否定するのは、誰であれ決して喜ばしいことではありません。ましてや、宣伝担当者が、「実施した広告展開が課題だらけでした」と経営サイドに報告することは勇気???のいることです。
企業の広告担当者が広告代理店の営業さんとお付き合いすることは、いろんな意味で気持ちの良いものです。それは否定しません。ただ、ここで仕事内容において一線を画しているかどうかは、いままでの経験上、経営者側は確実に見ています。

決して嘘はないでしょうが、グラフなどがデフォルメされ、好意的な解釈だらけの広告代理店からあがってくる調査レポートに時々出会います。途中まで分析コメントを読むと先に進む気になれず、結局、キャンペーンの評価の結論は頭のなかには入ってきません。結論は、流れの通り、期待通りの自己弁護だからです。
仮にレポートを見せられた経営側も同様の気持ちになることは、想像に難くありません。

でも、本当にうまくいった広告展開なのに、「また、良い報告だけですね」と経営側から言われたら、どうでしょうか?
なぜ、スポーツ競技のプレイヤー自身にアンパイヤーをさせるような、制作した当事者である広告代理店に広告効果測定をさせるのでしょうか?

そのために、中立的な第三者による成績表(広告効果測定)が必要なのです。ただし、我々のような第三者機関は必ずしも都合の良い結果ばかりを提出するわけではありません。でも、それにひるまないでください。なぜなら、課題解決などネクストマーケティングに向けた種が満載だからです。
もっと、自分たちがつくったものに自信を持ってください。そして正しい評価を受けてください。社内稟議が通らないと悩んでいる方も、正しい裏付けデータが投資の合理性を説く一番の材料であることを忘れないでください。

繰り返しになりますが、当事者同士の「もたれあい」は、真の意味で何も生み出さないのです。

■広告効果測定の結果が「変だ!」と思ったことはありませんか?

恣意的なものが働かない場合でも調査結果に疑問符がつくことがしばしばあります。

パターン例1: わずか300GRPしか出稿していないのに、CM認知率が70%。
パターン例2: キャンペーン毎の時系列で必ず上がっていく自社のブランドイメージ。
パターン例3: CM認知者ベースのブランド評価が著しく高い。

え!と思う結果かもしれませんが、似たような経験をしたことのある方は少なくないのではありませんか?

そしてそれらがレポートとしてあがってくると。。。

 <キャンペーン実施者側の解釈例>

パターン例1: インパクトが強い良いCMだったので到達効率が良かったのです。
パターン例2: 確実にキャンペーン効果が現れていますね。
パターン例3: 良いCMだったので、見た人のブランドイメージ向上に有意差がみられています。

しかし、客観的に詳細を見てみると。。。

 <冷静な解釈例と考えられる調査方法の問題点>

パターン例1: CMを動画提示しておらず、似たようなCMとの誤認が発生している。
パターン例2: 時系列調査でフレッシュサンプルを調査対象者としておらず、過去のアンケート回答自体で学習効果となっている。
パターン例3: ブランド関与者のCMへの興味や視聴態度が高く、当然ながらブランド評価も高くなる。

初歩的な話ですが、広告効果測定の正確な結果を得るためには、調査方法、サンプルの確保、調査時期、調査項目、提示順など様々な注意点があります。この辺のところは基本中の基本のお話なので割愛して進みますが、、、

ネットリサーチの結果を元に「パソコン所有率100%」という笑えないレポートを作らないよう、
間違いだらけの効果測定に陥らないことを願っています。

■CM好意度60%は高いの?低いの?

「高い」とも「低い」ともとれる数字。もしかして、伝える相手によって、解釈を「変幻自在」にしていませんか?

冗談はともかくとして、CMをつくる際に、嫌われることを目指していることはまずないでしょう。つまり、好意度がとれて当たり前のなか、この数字を解釈しなければなりません。それには、「他と比べてどうなのか」という基準値(NORM値)が必要となります。

その際に、同一テーブル上のモノサシを使うことが重要です。調査方法、対象者属性、質問ワーディングなどを一定にし、調査結果を積み重ねることが必須となります。
では、CM調査結果の平均値を見てみましょう。。。(下記グラフはクリックすると拡大します)


ということで、好意度60%は「一般的なCMと比べると若干評価が低い」
数字がやっと意味性を持った瞬間です。

今回は、広告効果測定に対する持論が長くなってしまい恐縮です。次回では、客観的な広告効果測定のテクニカル的な話をしていきます。

Column バックナンバー一覧