【特集】加藤公一レオ氏インタビュー 「独立した今だから語れるネット広告の今とこれから」

「ADKの加藤公一レオ氏、新会社設立」のニュースは、同氏が独立された2月に広告ニュース( http://www.findstar.co.jp/news/syosai.php?s=200986 )でも取り上げたので、記憶に新しい読者も多いと思う。このニュースは掲載直後から話題となり、週間のニュースランキングでも1位になるなど、広告業界内で注目度が高かった。同氏は“通販王国”と呼ばれる九州でインターネットを軸としたダイレクトレスポンスマーケティングに従事。日本を代表する大手健康食品通販や大手化粧品通販を成功へと導いてきた。同氏の独立は、広告業界にとって“通販王国 九州のヒミツ”の解禁でもあったのだ。 
では、新会社「売れるネット広告社」をスタートさせた今、同氏の仕事はどのように変わったのか、そして、同社は今後どんな方向へと向かっていくのか? 加藤氏本人に、直接、インタビューさせていただいた。


「売れるネット広告社」代表取締役社長 加藤公一レオ氏

■独立直後から引合いが殺到 そんな中でも講演には積極的に取り組んでいる
「コンサルとして顧問契約を結んでいるのは6社です。ADK九州時代の通販は今でも継続していますが、新規はすべて東京、広島、大阪の会社になります。会社を設立してから20件を超える問い合わせをいただいていますが、社員数がまだ3名ということもあり、設立2ヶ月ですでにキャパオーバー(笑)。クライアントのフォローをしっかりしたいという考えから、今のところはお断りしているという状況です。というのは、僕の場合、広告のレスポンスはもちろん、引上、リピート、顧客単価を上げて、最終的にはLTV(顧客生涯価値)を上げていくための仕組みを作るところからやっていくので、どうしても深く入り込まないとできない。広く浅くというのができないのですね。そんな理由で、新規の顧問契約は今のところ一時的にお受けしていませんが、講演のお話は積極的にお受けしています。僕がやっていることって、実はダイレクトマーケティングで昔から行われていたことをネットに転用しているだけなのですが、お話すると意外と絶賛していただけます。今は、講演やセミナーを通して、広告主にとっても業界にとっても正しいことを伝えていくことが有意義だと感じています」

■加藤氏がレスポンスの魔術師になるまで
加藤氏は大学卒業後、三菱商事株式会社に入社。その後EURO RSCG Tokyoを経て、株式会社アサツーディ・ケイ(ADK)へという経歴を持つ。
「僕も多くの広告マンと同じように広告業界に入ろうと思った動機は、とてもミーハーなものでした。キムタクのドラマ“ラブジェネ”に憧れたんです(笑)。でも、ラブジェネのような仕事はさせてもらえず、たまたまダイレクト型のクライアントばかりを担当することになりました。華やかなTVCMを制作するどころか、折込チラシやダイレクトメールなどコテコテのダイレクトマーケティングから入りました。ところが、次第に、自分がプランニングした広告でレスポンスがどれぐらい獲得できるのか、採算がとれるのかというところに、毎日ドキドキワクワクするようになりました。知らず知らずにレスポンス率やCPA/CPO等の数値を把握する習慣が身についていきました。ちょうどその頃、ADK九州支社で日本を代表する大手健康食品通販クライアントの担当部署の社内公募があって、ダイレクトマーケターにとっては最高の舞台だと思い、手をあげました。だから、ネット出身ではないです。ダイレクトマーケティングをずっとやっていて、その手法をネットに輸入したのです」

同氏がADK九州支社でインタラクティブコミュニケーションルームを立ち上げた当時、九州にはネット専業代理店は1社もなく、総合広告代理店にもネット部署はなかったという。
「競合がいない中、パイオニアとして九州のネット広告市場を開拓しました。その結果、九州のネット広告市場の約半分を独占することになりました。それだけお金が集まるとノウハウも詰まってきますし、僕たちはダイレクト系に特化していましたから、パートナーシップも強い環境にいました。あらゆるクライアントから累計で数十億円の広告費をお預かりして、あらゆるネット広告キャンペーンを実施してきました。クライアントに大損をさせるような失敗をした事もあります。そうした経験を重ねながら、失敗から見えてくることを徹底改善して、現在ではあらゆるクライアントに大儲けをしてもらえる確実な“ネット広告の勝利学”を身に付けています。おそらくダイレクトレスポンス型ネット広告に特化した経験で言えば、日本の広告業界の誰よりも経験があると自負しています。自画自賛するようですが、ここ数年で僕がネット広告を手がけた全てのクライアントは、レスポンスが最低でも2倍以上、CPAが最低でも半分以下になっている。これが、僕の唯一の自慢かもしれません」

■重要なのは費用対効果の“意識”とダイレクトマーケティングの“知識”
ネット広告を成功させるためには、「広告業界の意識と知識の改革が必要」と同氏は断言する。総合広告代理店がネット広告で苦戦するのは、これまでのやり方との文化の違いもあるが、“意識”の問題が大きいという。
「マス広告出身の広告マンの多くは、知識は豊富ですが、広告の仕事を販売業だとは考えていません。彼らにとって広告はカルチャーであり、コミュニケーションであり、アートであり、エンターテイメントであったりしますが、ただひとつ“広告は商品を売ってなんぼ”という最も基本的な事実だけはどうしても認められないのです。なので、まさかと思われるかもしれませんが、彼らの多くは広告の費用対効果を全く考えたことがありません。ただし、ネット広告時代においては意識を変えないといけません。費用対効果の見えない広告は、効きめのない薬と同じです。服用した安心感はあっても、何も改善しない。ネット広告を成功させるためには費用対効果の“意識”が重要なんです」

一方、ネット専業代理店はというと“知識”が足りないために、「結局、メディアの枠売りになっている」と指摘する。
「ネット広告出身の広告マンは費用対効果の意識は高いのですが、ネットの最新テクノロジーやトレンドばかりに目をとらわれてすぎています。ネットはたかがツールであって、ソリューションではないという事実がどうしても認められないのです。ネットというツールを活かすには、ダイレクトマーケティングの知識が不可欠です。わずか10年ちょっとのネットに比べて、ダイレクトマーケティングには100年以上の歴史があり、そこには売るための仕組みにまつわる桁違いのノウハウが蓄積されています。ネット広告を成功させるためにはダイレクトマーケティングの“知識”が重要なのです」

「いずれにしても、広告マンはクライアントへ媒体を売り込むセールスマンではなく、クライアントに投資してもらう証券会社のファンドマネージャーのような存在になるべきです。投資をどう運用していったら、ROIを最大化できるかを徹底的に考え、実行するべきです。エクセル表でメディアプランを作って媒体を売るだけなら誰でもできるのですから」

先の見えない不況の中で、企業は費用対効果に厳しくならざるを得ない状況にある。今後は、テレビCMやウェブサイトのバナー広告においても、何らかのレスポンスを求める広告主が増えてくるだろう。実際、ナショナルクライアントの中にもダイレクトマーケティングに力を入れはじめた企業も出ている。広告を作り、売る側の代理店には、いかに注目を集めるかというだけでなく、どうしたらレスポンスを得られるか、さらには売上につながるのかという視点が、今まで以上に求められている。

■「売れるネット広告社」の未来
最後に「売れるネット広告社」の抱負、および未来についても伺ってみた。
「通販王国と言われる九州で培ってきた“最強の手法”を全国の通販クライアントに提供していきます。キレイゴト無しに売ることだけに特化し、ネットマーケティングというひとつのフローを隅々まで丹念に仕上げていきたい。レスポンスはもちろん、引上からリピートに至るまでの全体に責任を持ち、クライアントの売上に徹底的に貢献します。将来的には、30人程度を上限にして、1人ひとりが強いという少数精鋭の組織、いわばネット広告業界のマッキンゼーみたいな会社を目指します。日本のネット通販で成功している会社には必ず『売れるネット広告社』が関わっているという状態にするつもりです。このままクライアントを成功させ続けることができれば、時間の問題ですよ」