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CKO西根英一の思索×考察

ヘルスケア(健康・医療・美容)をテーマに世の中の「事例/事象」を取り上げ、マーケティングコミュニケーションの視座から「戦略/戦術」に触れ、解説します。

西根 英一
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第3回:ヘルスケア・サービスの良いの、悪いの。

健康大国・ニッポン。カラダの健康(フィジカル・ヘルス)だけでなく、ココロの健康(メンタル・ヘルス)も、とても大事にする時代になりました。2015年12月から従業員50人以上の事業所を対象に、「ストレス・チェック」という仕組みも始まりました。そして、従業員のストレス軽減のための取組みもまた、これらの企業に求められるようになりました。
ストレス軽減、ストレス解消には、休養と睡眠が大切と言われます。となれば、こんなサービスが生まれるのも当然のなりゆき。たとえば、「快眠」を測るサービスがそれ。でもいきなり、分厚い壁にぶち当たります。
いったい、“いい眠り”って何だろう?(▶快眠の定義)。
“いい眠り”って、何を測ればいいの?(▶快眠の計測)。
どんな値を示したら、“いい眠り”を獲得していると言えるの?(▶快眠の評価)。
不眠症という病気を定義することはできます。だから、診断して、疾患名を確定して、レベル感に応じて正しく治療することができます。しかし、快眠を《定義》するための、《計測》するための、《評価》するための統一規格はありません。だから、睡眠を計測するヘルスケア・サービスは、あれやこれやと乱立状態、サービスを受ける消費者も、あっち向いたり、こっち向いたりと混乱状態。どんな英知を集め、いくら技術を極めたサービスであっても、結局のところ、“あやふや”なサービスなのです。

■ヘルスケア・サービスって、何なの?

心身の状態には、「異常」と「正常」があります。その間に「境界域」が存在していて、それぞれ、「病気」と「健康」、その間が「未病(≒疾患予備軍)」と呼ばれます。そして、“いい状態”を保つための方策としてサービスが生まれ、「病気」を治療したり、「健康」を増進したり、病気が発症しないように予防したりします。
ヘルスケア・サービスとは、本来、これらすべてを包含しますが、医療専門職の医師や薬剤師や看護師が提供するメディカル・サービス(医療行為)と区別し、一般には、予防、保健のために提供されるサービスをヘルスケア・サービスと呼んでいます。
僕らは、ときに製品を介して、ときに施設を通して、プログラムやカリキュラム、あるいはコンテンツとかアプリといったカタチで提供されるサービスを享受しては、良いの、悪いのと勝手に批評をしちゃうわけです。これが、ヘルスケア・サービスをめぐる現状です。

■ヘルスケア・サービスの効果は測定できるのか?

病気を診断するにも、病気を治療するにも、何十年もの研究成果をもとに定められた“診療ガイドライン”なるものが、《ものさし》として機能しています。この《ものさし》があることによって、有効性、安全性、簡便性、経済性をエンドポイント(到達目標)として定め、その到達度をもって、客観的に評価することが可能です。さらに、それらが将来に向けた効果計測の道標となって、精度の高い診断法、効果の高い治療法が開発されていくのです。
同様に、ヘルスケア・サービスにも、有効性、安全性、簡便性、経済性といった機能面を捉えた効果計測の尺度を定める必要があります。
しかし、ヘルスケア・サービスには、これら機能的な《ものさし》だけでは評価しづらい、もう一つの側面があります。たとえば、サービスに対する共感性や安心感といった超情緒的な尺度、事前期待値と事後満足度といった超主観的な尺度です。
つまり、ヘルスケア・サービスの効果計測には、医学的、経済的なアプローチだけでなく、人間工学的、行動経済学的、消費者心理学的、クリエイティブデザイン的なアプローチが求められることになります。

■ヘルスケア・サービス効果計測コンソーシアムの登場!

そこに登場したのが、「ヘルスケア・サービス効果計測コンソーシアム」です。経済産業省の次世代ヘルスケア産業推進事業のもと、サービスの効果を第三者的に示す体制整備が推し進められています。その事業の一環として、国立産総研の臨海副都心センターを拠点に、理化研や日本規格協会等が組織の骨格を成し、医学、疫学、統計学、工学、マーケティング学、デザイン学の専門家らが集まりました。
▶ WEBサイト
目的は、明確です。社会実装を前提とした第三者認証の方法を確立し、ヘルスケア・サービス産業の競争力を強化すること、ヘルスケア・サービス市場を拡大すること。
ここで、僕はコンソーシアムの役員として、また、この中に設立された「EBN研究会」の代表も務めています。「正しい」サービスが、「いい」サービスとして生活者に享受されることを願います。


参考:「EBN研究会」について
【活動背景】
EBM(Evidence Based Medicine)は治療医学の科学的かつ倫理的な発展に寄与し、広く社会に貢献することとなったが、予防医学に寄与するはずのトクホや機能性表示食品に関しては、エビデンスが学究的な基準を持たず、商材開発に当たる企業、自治体においてさまざまなレベルの研究結果をエビデンスと表し、予防、保健、健康増進に関するエビデンス評価の基準となる“ものさし”(≒エンドポイント)、“やじるし”(≒介入方法)、“めじるし”(≒第三者認証)に混乱を招いている。
【活動目的】
治療から予防に世の中が大きくシフトするなか、EBN(Evidence Based Nutrition、科学的根拠に基づいた栄養摂取・食事管理)は予防医療における重要な介入指標となる。本研究会では「健康×栄養」領域の学術的かつ実業的な基準について検討し、EBNの基盤整理のもと、効果計測のサービスを社会実装していくために活動する。
【活動概要】
EBNに係る取り組みを企業間で共有し、計測の標準化を目的とした定期的な勉強会(春夏秋冬の年間4回)を通じてEBNのナレッジを共に学び、互いに情報発信していく「共創互恵」を基本に会を運営する。このなかで、“ものさし”となるエンドポイント、“やじるし”となる介入方法を定め、ゴールとしてサービスの“めじるし”となる規格を開発する。会員企業・自治体には、これに至るプロセスを持って帰ってもらい、商品開発、サービス開発に役立てていただきたい。
【対象会員】
予防、保健、健康増進に係る食品の生産・加工・流通に関わる会員、栄養摂取・食事管理に専門的知識を有する会員、自治体等でヘルスケア産業振興や健康増進業務に関わる会員、栄養と健康に関わる研究を行っている会員を、業種や企業規模等の条件なく、広く募集する。

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