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マーケティングの巨星たちが教える、21世紀型マーケティングとは

「マーケティングで世界をより良く」をスローガンとする、ワールド・マーケティング・サミット発起人のフィリップ・コトラー教授のインタビューなどを紹介します。

ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン編集部
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第二回:「現代のマーケティングの父」フィリップ・コトラー教授に聞く(上)

 

本コラム第2~3回では、マーケティングホライズン編集委員長・丸の内ブランドフォーラム 代表 片平秀貴氏による、フィリップ・コトラー教授へのインタビューを紹介させて頂きます。

 

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2014年3月3日に行われた「Philip Kotler Marketing Forum 2014」。

Forumのテーマは「イノベーションで勝つ」です。その前日、私は教授にインタビューする機会を持ちました。Forumの本題につきましては他の論考に譲り、冒頭のこのインタビューでは、原点に返って教授がそもそもマーケティングという分野に関心をお持ちになったきっかけから今に至るまでの、まさにマーケティング論の領域で「イノベーションで勝ち続けている」さまを直にお聞きしました。

 

 私のオフィスの書架には、数多くの教授の著書に混じってその中の代表作中の代表作 Marketing Management の初版本(1967年刊)があります。それは、私が大学院でマーケティングを専攻するきっかけになった書だというと話が美しいのですが、そうではないまでも1966年に大学院に入ってマーケティングを研究し始めた私に初めてその分野の全体像を教えてくれたかけがえのない教科書だったと言っていいでしょう。それは初版以来版を重ね、時代を反映した革新を遂げながら今日まで15版(2013年刊)を重ねるに至っています。


 私ごとで恐縮ですが、その初版本に出会って以来、教授の枠組みはマーケティングと言われる分野で論文を書き、教鞭をとり、実践のアドバイスをし、そしてまさに『マーケティング ホライズン』の編集責任者をしてきている私にとって、いつもグリニッチ標準時のごとく一つの「基点」を提供してくれていて、大いにお世話になってきました。


 その一方で教授の議論には、「戦略」、「ターゲティング」、「刺激-反応モデル」などの言葉が示唆するように、企業が消費者にアクションをとると必ず何らかの合理的反応があるといういわゆる米国流とかMBA的と言われる一連の考え方が色濃く滲んでいて、そこにいつも違和感を覚えているのは正直なところです。そのような異端者の代表としては、いつか教授のマーケティング観にじかに触れてその真意を確かめてみたいという思いが強くありました。

 

 私自身、米国のマーケティングの教授連に友人は多いし、実際にMBAコースでマーケティングを教えてもいましたが、残念ながらコトラー教授とは1994年に小規模な会合で丸一日同席したことがあるのみで、じっくり「マーケティング」の話をする機会には恵まれませんでした。今回は、限られた時間でしたがそのあたりのお考えをじかにお聞きしようとインタビューは始まりました。

 

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3人のノーベル賞教授から経済学を学んだが、何かが足りない

片平 よろしくお願いします。まず、今朝お着きになってすぐにインタビューを4つもこなされるという先生のエネルギーには驚きました。



コトラー ええ、私にはエネルギーは結構あります。ですが、飛行機の中では寝られますし、こちらに着いてからも少しは休んだのでまったく問題ないです。いつもこんなもんですね。

 


片平 素晴らしいですね。見習わなくては。さて、今年(2014年)1月の日経の連載は楽しく読ませていただきました。そこで、MITで経済学の博士号を取って少ししてから先生はノースウェスタン大から経済学かマーケティングどちらのポストでもいいから好きな方を選びなさい、というオファーをいただいたとあります。

 

 

コトラー 私はMITの博士課程では3人のノーベル経済学賞を取った著名な教授(注:ポール・サミュエルソン;フランコ・モジリアーニ;ロバート・ソロー)について経済学を研究しました。そうしながらも経済学には何かが欠けているとずっと感じていました。現実の世界を扱っていない、現実の消費者の意思決定を説明しきれていない、と思ったのです。当時、カーネギーメロン大ではハーバート・サイモンやリチャード・サイアートなどの人たちが現実の世界を見て、最適化ではなく「満足化(satisficing)」を唱え、アルゴリズムとかヒューリスティックスといった、人々が実際に意思決定に使うルールをそのままモデル化しようとしていたのです。


 もう一つは、ノースウェスタンに来る前丸々1年間、フォード財団の「経営学教官のための高等数学」というプログラムでハーバードに滞在しました。50人ほどのビジネススクールの教官が集まって算数ではなくこれからビジネスでも必要になるであろう高等数学を学ぼうというもので、ORや財務などに混ざってマーケティングを教える教官グループも参加していました。私は、当時は経済学を教えていたのですがマーケティングの連中とすぐに仲良くなりました。その中には新製品普及のバス・モデルで有名なフランク・バスや新製品開発で著名なエドガー・ペッシマイアなどがいて彼らからマーケティングの手ほどきを受けました。そのときこれこそが自分の研究で欠けていたものだと痛感したのです。そしてマーケティングこそが経済学だと。経済学者の連中はそっちに全く注意を向けていませんでした。


 私は経済学者でしたので、マーケティングの定量的側面に関心を持ちました。経済学には生産関数というものがあるのですが、同様に売上反応関数も考えるべきだと。広告を投入していくと売り上げはどう伸びていくのか。それが分かると広告をどこまで投入すればよいかが分かる、というわけです。


 そうしているうちに、ノースウェスタンのケロッグ大学院の長だったダン・ジェイコブズという人、その人もちょうどこのフォード財団のプログラムでも一緒だったのですが、彼が私にこう言ったのです。「ケロッグで教えないか。経済学を教えてもいい。でも経済学はもう出来上がった学問で面白みに欠けるよ。マーケティングはやることがたくさんある。君は経験は薄いが君のマーケティングへの強い関心が何かを生む予感がする」と。私もまったく同じだったので喜んでマーケティングを教えることになったのです。

 


マーケティングを学ぶ人に誇りを

コトラー そう決まってからマーケティングの書物を徹底して読み漁りました。そこで分かったのは、どの本も、叙述的(「卸とは***」)かハウツー的(「こうやって広告予算を決めなさい」)かでしかなかったことでした。そこにはきちんとデータを駆使して、良質な価格決定や広告予算決定に資するアプローチはありませんでした。そこで、自分の講義全部をテープ起こししてそれに手を入れたら新しいマーケティングの教科書になる、という講義を用意しようと思ったのです。それはマーケティング意思決定がテーマでした。マーケティング反応関数をきちんと特定できれば、そこから最適なマーケティングミックスを導くことができる、という考え方に魅了されました。


 この書物化の話を出版社の編集担当の方にしたところ「それは議論が洗練されすぎていて売れる本じゃない。もっと万人受けがするマーケティングの教科書を書いてください」と言われてなるほどと思い言われるとおりにしました。それが1967年に出版されたMarketing Management です。とても多くの方に受け入れられました。すでに定番の教科書が6,7冊あるのになぜ受けたのだろうと考えました。いろいろと考えた結果たどり着いた結論は、「教科書として使う教官たちに自尊心を植え付けたこと」でした。それまでの教科書は軽くて興味深いストーリーはありましたが、まったくサイエンスの香りがしませんでした。経済理論、統計理論、組織論、行動科学などの議論の裏付けがあったということで、マーケティングを教えていた教授たちは私の教科書を使う方が格好がいいと思ったのだと思います。

 

 


時代とともに進化する

片平 (自分の初版本を取り出しながら)
これがその本ですが、その中で先生は「分析的アプローチ」、「意思決定指向」、「関連分野の学術的成果の尊重」の3つのポイントを強調されましたが、これは今に至るまでに何か変化しましたか。



コトラー 意思決定志向は変わっていません。私は現場での意思決定に役立つことをずっと志向してきました。分析的アプローチも学術的成果の尊重もサイエンスであろうとしたら当然のことです。4版ほど前からケビン・ケラーに加わってもらい共著になりましたが、彼と話しているのは、議論をより精緻化しなければという点です。社会全体のデジタル化でフェイスブックやツイッターが普及し、この分野でのマーケティングの成功をどう測るかなど今までになかった問題が出てきています。


 Marketing Management のほかに2つ教科書を書いています。Principles of Marketing とMarketing Essentials の2つです。Marketing Managementは大学院向けですがほかの2つは学部向けで、前者はレベルの高い学部向け、後者は易しく学びたい学部向けのものです。これらはMarketing Management より易しく書かれています。さらに実務家向けに600頁ではなく200頁の本が欲しいという声に応えてFramework of Marketing という本も書いています。



片平 読者に合わせて商品を拡張されていったわけですね。まさにマーケティングのマーケティングをされていますね。先生の「マーケティング」に対する考え方はどう進展されましたか。



コトラー もともとマーケティングの関心はクルマや食品といったモノが中心で、サービスは見過ごされがちでした。私は銀行や病院といったサービスのマーケティングはどうあるべきかを考え始めました。つぎにあるところの市長がやってきて観光客を増やしたいのだがと相談を受け、そこから街のマーケティングもあるのではと考えました。つぎにオーケストラの人がやってきて客が集まらないのだがと相談を受けそれがきっかけで芸術のマーケティングの本を書きました。最近は「自分」のマーケティングや宗教団体のマーケティングについても相談に乗っています。あらゆる分野でマーケティング意識が高まればいいと思っています。


 いまはビッグデータの時代です。できる営業の人が自分の顧客一人一人の好みを把握できているように、一人ひとりの顧客データからその人の細かな好みを把握しその人が喜ぶアクションが取れるようになってきています。そんな時代ですから、そのあたりをきちんと議論に取り込んでいきたいと思っています。

 

  
                                                                            Interview & text  片平秀貴
(マーケティングホライズン編集委員長・丸の内ブランドフォーラム 代表)

~「フィリップ・コトラー マーケティング・フォーラム 2014」特集号から引用

 

 

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以上、フィリップ・コトラー教授インタビュー前編でした!
なお、フィリップ・コトラー教授が今回、24~25日に「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン 2014」で講演されます。

 

9月24~25日の2日間、世界各国のマーケティングの第一人者が集結する「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン 2014」。
日 本の最新マーケティング事例を含むケーススタディや、世界各国から招く著名なスピーカー達によるディスカッションなど、広告・マーケティング業界にいる方 必聴のコンテンツが多数用意されているとのこと。

 

今回、広告ニュースで本コラムをご覧頂いている方にも、参加費用2万円引きの特典をご用意頂きました。以下に詳細を記載させて頂きます。ご興味がございましたら是非お申込みください。

 

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日程:2014年 9月24日(水)10:00~18:45(予定)
        25日(木)9:30~17:40(予定)
会場:グランドプリンスホテル新高輪「北辰」
登壇:フィリップ・コトラー
   デビッド・アーカー
   アル・ライズ
   ドン・シュルツ
   高岡浩三(ネスレ日本代表取締役社長兼CEO)
   新浪剛史(サントリー顧問)
   吉田忠裕(YKK代表取締役会長)
   魚谷雅彦(資生堂代表取締役執行役員社長)ほか

参加お申し込みはこちら:
→ https://ssl.worldmarketingsummit.jp/apply/
  ※ 広告ニュース読者様は参加費が2万円引きされます
     お申込時、「参加区分」で「ファインドスター広告ニュース」を選択して下さい。

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