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リサーチで顧客の声を聴け!課題把握で売上をあげるリサーチのツボ!

1968年の創業以来の豊富な実績と、最新手法をあわせ持つジャパン・マーケティングエージェンシー。東京オフィスはトレンドの発信地かつ、新興企業の集まる渋谷に位置し、常にマーケティングの最前線を肌で感じています。これまでの多数のマーケティング実務を通じて得た、マーケティング・リサーチのツボをご紹介します。

牛堂 雅文
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第5回:『本質的に実施すべきリサーチとは何か?』

■なぜマーケティング・リサーチを実施するのか?


そもそも、何のためにマーケティング・リサーチが実施されるのでしょうか?

マーケティング・リサーチが日本に定着してから長い年月が過ぎ、現時点では「新製品開発時に調査をするルールだから調査をする」、「説得のために資料が必要だから調査をする」といった【調査を実施すること】が目的のようになってしまうケースがあると思われます。

しかし、原点に戻り、【売り上げを上げる】…というシンプルな目的で考えた場合、本来はどういった調査を実施すべきなのでしょうか。今回は【本質的に実施すべきリサーチ】について述べさせて頂きます。



■「提供側と顧客のズレ」を把握するリサーチ

まず、ゼロベースで考えると、「マーケティング・リサーチなし」でも製品開発・プロモーションプラン策定は可能です。過去の販売データや経験則、流通・営業の意見など、判断材料はありますので、通常全く情報がない状態ではありません。

しかし、そういった情報だけで「提供側と顧客(エンドユーザー)側の重視点」が一致することはほぼなく、大体何らかのズレが生じます。その「ズレ」が何か?その確認が必要になります。
もし、「ズレ」が致命的なものであり、気が付くのが遅ければ、開発にかけたコストの回収は難しく、損失も大きなものとなってしまいます。

近年、小さく早くPDCAサイクルを回す【リーンスタートアップ】という考え方が注目され、早い段階で提供側と顧客のズレを発見し、修正できることが重要視されています。

本質的に実施すべきリサーチとは、【この「顧客とのズレ」に早く気が付くためのリサーチ】です。以下、ステップごとに【顧客とのズレ】に気が付くリサーチについて述べていきます。

【1】そもそものニーズを確認せよ              
【2】現場に飛び込め
【3】ターゲット層を知れ
【4】プロトタイピングでPDCAを回せ
【5】初期の課題を把握せよ




【1】そもそものニーズを確認せよ 「市場実態調査」



仮に「肩こりに関する新製品」を市場投入しようと検討しているとした場合、
 ・肩こりに悩む人がどの程度いて(市場規模)
 ・それは誰で(ターゲット層のプロフィール)
 ・今はどうやって対処しているのか(代替品・代替手段)
この位の情報が最初にないと、そもそも「市場に参入したり、製品を開発する価値があるのかどうか」すら分かりません。

これは作ろうとしている製品の出来、不出来以前の話です。仮想の話として、「肩こりに悩む人」が日本に1000人位しかいない、そして今後も特に増えそうもないとすれば、ビジネスチャンスは大きくありません。もし、この規模なら参入しない方が良いのではないでしょうか。

実際には肩こりの人は多数いますので、市場規模がクリアーだったとして次に、今の対処法である「代替品・代替手段」は割と重要です。新製品を投入した場合、価格や手間などの比較対象となりますので、それに比べて安い、速い、手軽、より本格的、+αの付加価値がある、など何かが勝っていないと「新製品のいる場所・存在理由」がありません。ここも含めて確認が必要でしょう。

このあたり、既存の資料でカバーできる場合は不要かもしれません。ただ、大体は「かゆいところに手が届かない資料」とでもいいますか、ドンピシャのデータではなかったり、データが古かったりします。

もし、適切なデータがないのであれば、基礎データを得るための「市場実態調査」の実施をお勧めします。


【2】現場に飛び込め 「現場観察・ホームビジット調査・観察調査」



このステップは調査というよりは、「準備体操」といっても良いかもしれません。

ターゲット層が性年代、人のタイプなどで「自分に近いプロフィール」である場合はまだ良いのですが、自分とは異なるタイプの人々がターゲットとなっていた場合、頭で考えたターゲット層は【絵に描いた餅】のようなもので、不確かな存在だと言えます。

また、ターゲット層と自身が近い場合でも、企業に長く在籍していると、感覚が一般消費者から遠ざかることもままありますので、性年代などプロフィールが近くてもやはり過信は禁物です。

そこで、非常にベーシックな話ですが、【購買や利用の現場】に行って観察することで、自身の感覚を研ぎ直します。この【現場に飛び込む】ステップが顧客理解の出発点となります。

もし、シニア層を対象にした製品開発をするのなら、シニアが居そうな場所に行きまずは観察をしてください。シニア層が主な顧客となる売り場があれば、そこに行くのも良いでしょう。そこには、競合となりそうなブランド・製品や、好まれそうな色使い、表現(コピー)などが散見され、感覚的にもターゲット層が理解でき始めるはずです。

ターゲット層がシニア以外でも全く同様です。【購買や利用の現場】に出向いて、「机上の理論」、「絵に描いた餅」から脱出することを第一歩としてください。
この段階を省略して「データだけで物を語る」のは非常にリスキーであり、下手をすると現実離れし、誰も振り向かない製品を市場に出してしまうことになりかねません。

売り場やユーザーの多そうな場所に行くだけでもそこから見えてくる物がありますので、何とか時間のやりくりを付けて、まずは【現場】に出向いてください。

とはいえ、例えばそこが「お風呂」や「トイレ」といった場所であれば、現場に飛び込むことはそうそう簡単ではなくなります。「あまりユーザーが多くない製品」などの使用現場も、普通に生活していて目にすることは難しいでしょう。

独力での現場へのアプローチが難しい場合には「ホームビジット調査」、「観察調査」といった使用現場やユーザーにアプローチする調査の実施をお勧めします。

そこで得られる情報は大変リッチで、人となりを感じさせる非言語的な感覚も含まれますので、発見を記録し忘れないよう、色々な手段をご検討ください。個人情報への配慮をしつつ、デジカメ、ビデオカメラ、といったツールがよく用いられます。

その現場で気が付いたこと、発見は「温度感、鮮度」が下がらないうちにまとめ、貴重な発見を忘却の彼方に薄れさせないようお気を付けください。


【3】ターゲット層を知れ 「仮説検証調査」


前のステップで【現場感覚】が養われた後は、「ターゲット層はどういった人で」、「何を考えているのか」、「何を持っているのか」、「どこで製品を買うのか」といったターゲット層を知り、具体的なものに落とし込むステップとなります。

【現場】は「よくも悪くも氷山の一角、一部の人」を見ているにすぎませんので、「そういった人はどの程度いるのか」「プロフィールなどは異なるが、同じニーズを持っている人がいるのではないか」…など俯瞰してターゲット層を眺めたり、すそ野を広げたりする発想となります。

定量調査(アンケート調査)で、様々な仮説をぶつけ、ターゲット層を明らかにしていきます。この目的単独での調査実施がお勧めではありますが、【1】【4】の調査とまとめて同時に実施されるケースもあります。

注意点としては、簡単なリサーチでも「それらしい数字」が出てしまいますのでそれで理解したつもりにならず、【複数の仮説】を作成し、それを確かめるプロセスを踏み、【足元を固める発想】を持ってください。

もちろん、仮説の中には「納得しがたい」「論理的ではない」ものも含まれます。しかし、そういった非論理的なものや、情緒的なイメージも購買や行動の背景になるということを忘れないでください。

一例を上げますと、ペット用品を考えているとして「ペット用のケーキ」といった商品があります。ロジカルに「何の意味があるのか?」と考えると「非論理の極み」に思えます。本来動物が生息している自然界に、ケーキが存在するはずはありませんし、「必要性」で考えると意味はないでしょう。

しかし、「室内飼い」が一般化し、あたかも子供のように家族の一員となったペットに「お誕生日ケーキを上げたい」というのは、分からないでもない発想です。このように、仮説作成時には、「必ずしもロジカルに購買行動がなされるわけではない」ことに留意する必要があります。

こういった様々な要素を洗い出し、整理し、【ターゲット層が何を考えているのか?仮説は正しいのか?を検証する調査】を実施してください。


【4】プロトタイピングで高速PDCAを回せ 「コンセプト調査」「プロダクト調査」


最初にご紹介した「リーンスタートアップ」という、ベンチャー企業・新規事業のスタートアップなどで用いられる手法があります。

「リーンスタートアップ」では、完成度が低くても構わないので、顧客候補にプロトタイプの製品を試してもらい、そこから得たフィードバックでPDCAの改善サイクルを早く回していくのが特徴となっています。

ここでポイントとなる点が2つあります。
(1)誰に聞くか
(2)プロトタイピングの完成度


(1)誰に聞くか


「ターゲット層」に該当する人に聞くのは当然なのですが、できるだけ、「自分で使い方を考えたりできる、イノベーター、アーリーアダプター的な人」に聞くことが重要です。

どうしても初期には完成度の低いプロトタイプになりますので、「これじゃあ分からないよ…、完成品を持ってきてくれないと意見を言えないよ。」と言われても話が進みません。

ただ、そこまで贅沢がいえないケースもありますので、「10名の方に聞いて、その中で初期の顧客になってくれそうな先進層の意見に重きを置く」というやり方もあります。いずれにせよ「初期の顧客になってくれそうな人」の意見が大事です。

(2)プロトタイピングの完成度

よくある失敗が「プロトタイプ」に関するものでして、コストと時間をかけてちゃんとした製品・プログラム等を作ってしまい、修正すべき問題点に気がついても開発コスト等の問題で後には引けなくなってしまう…というものです。

初期段階の評価には、「リーンスタートアップ」では「ペーパープロトタイピング」と言われ、マーケティングリサーチでは「コンセプトシート」等と呼ばれる、「紙に書いたプロトタイプ」を用います。

紙に利用イメージや、この製品の核となる部分、主な特徴などを記載したものですので、モックアップも、プログラムのコードも何もありません。費用も時間もあまりかからず作成できます。(もちろん、短期間・低コストで作成できるなら実物を作成する方が望ましいのは間違いありません。)

このプロトタイピングで重要となるのが、「MVP」(Minimum Viable Product:検証に必要な最低限の機能を持った製品)であることであり、コンセプトシートだろうが、紙芝居だろうが、検証に必要な「コアの部分」を含んでいなければなりません。

もし、デザイン性が大事な製品ならデザインが伝わることが必須ですし、大きさ・重さが大事ならそれが伝わるようにしないといけません、低コストが売りなら価格を設定しないと評価ができません。

逆にその他の機能や完成度は徐々に上げていけばよいので、検証のPDCAサイクルを速く回すことを重視します。「修正したり、方向転換(ピボット)ができる段階」で想定顧客の意見を聞くことこそが、プロトタイピングのキモとなります。

複数の方向性のものを作って同時に検証を進め、一番優秀なものを製品化する方法もよく用いられます。

●プロトタイプ評価のマーケティング・リサーチ

上記2点に注意しつつ、改善サイクルを回し製品の完成度を高めるような調査を実施します。初期は「製品コンセプト案」の評価、その後は「試作品」の評価、そして最後の方は「パッケージ評価」などと進んでいきます。

グループインタビューやデプスインタビュー、CLT(会場調査)、HUT(ホームユーステスト)などが実施されます。

もちろん、コストや時間との戦いとなりますので、全て「マーケティング・リサーチ」で検証するわけにもいかず、知り合い、家族などに試用してもらうケースもあると思います。ただし、「誰に聞くか?」を間違うと「ズレ」が生じる恐れが大きくなりますので、「ターゲット層に確認するステップ」を必ず含めてください。ここをおろそかにすると致命傷になりかねません。


【5】初期の課題を把握せよ 



無事に市場投入にこぎ着け、一安心…というわけにも行きません。「初期購入者」の声を聴き、想定通りの使い方がなされているのか、トラブルはないか?必要があれば対策を打ったり、回良品を投入する必要があるかもしれません。

マーケティング・リサーチで「初期購入者」の意見を把握する手もありますが、あまりに初期すぎると、購入者はまだ少なく、集めることが難しくなります。そこで、「リスニング」などと呼ばれ、Web上の口コミを把握し、初期購入者の生の声に接する方法が現実的です。

シンプルな方法としては「製品名などで検索」となりますし、リスニング専用の分析ツールを使う方法もあります。

ただ、Web上の口コミは、背景の分かりづらい短い文章であることも多く、改善のヒントとしては不十分なこともあります。より具体的、詳細な意見を探ったり、実際に使っているシーンを見たい場合は、購入者を集める苦労はありますが、初期購入者に対するマーケティング・リサーチを実施します。

また、購入以前のプロモーション、店頭での存在感がないなどの問題で、「そもそも認知されていない」ケースもあります。そのため、市場浸透度を把握する調査も実施されます。

こういった初期の課題を放っておくと、いずれ大きな問題に発展してしまうこともありますので、「初期には課題が必ずあるもの」と考え、何らかの方法で課題を把握することをプランに含めてください。


■最後に

ここまで、【本質的に実施すべきリサーチ】として、【提供側と顧客のズレ】に早いタイミングで気が付くリサーチについてお伝えしてきました。

ポイントは、【ズレにいかに早い段階で気が付き、軌道修正をできるようにするか?】であり、「意思決定できるタイミング」でマーケティング・リサーチを実施することがキモとなります。

【売り上げが悪いからマーケティング・リサーチをしよう】…という姿勢もありますが、ぜひ【売り上げを最大化すべく、早い段階からマーケティング・リサーチをしよう】という攻めの姿勢でマーケティング・リサーチをご活用ください。

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