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リサーチで顧客の声を聴け!課題把握で売上をあげるリサーチのツボ!

1968年の創業以来の豊富な実績と、最新手法をあわせ持つジャパン・マーケティングエージェンシー。東京オフィスはトレンドの発信地かつ、新興企業の集まる渋谷に位置し、常にマーケティングの最前線を肌で感じています。これまでの多数のマーケティング実務を通じて得た、マーケティング・リサーチのツボをご紹介します。

牛堂 雅文
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第3回:顧客の声はそのまま使うのか?

「顧客の声が重要と聞いたので、アンケート結果通りにやったら全然売れません。どうなっているんですか?もう、アンケートなんか信用できません。」

いかにもありそうなマーケティング・リサーチへの批判です。ここで、顧客の声がきっかけとして起こったある事件をご紹介します。


●iSnack 2.0騒動

 

2009年にオーストラリアでKRAFT社が「VEGEMITE(ベジマイト)」の姉妹品を発売するにあたり、顧客の声を反映すべく「公募」を元に製品名を決めたところ「iSnack 2.0」というネーミングとなり発売されてしまった騒動です。

その頃、iPod、iPhoneなどが注目を浴び「i」を付けるのがクールであったり、Web2.0など「2.0」が流行っていたタイミングだったせいもありそうですが、さすがにそれをそのまま用いるのはないだろう…と当時マーケティング界隈で「iSnack 2.0」は失敗事例として名をはせました。

結果的に「ベジマイト」ファンからクレームの嵐となり、「iSnack 2.0」は「VEGEMITE Chseesybite」と改名され騒動は収まったようです。この騒動から得られる教訓として、「顧客の声なんてあてにならない」と捉える方もいるようですが、私はそうは考えていません。

アンケートではなく、ユーザーの行動を観察するなど、前回のコラムでご紹介した「アンケート以外のリサーチの活用」もぜひお勧めしたいところですが、今回お伝えしたいことの趣旨は少し違うところにあります。

そもそも、顧客の声は宝の山ですし、そこを無視することは得策ではありません。しかし、「顧客の声そのままに製品開発をする、意思決定をする」のはいかがなものか?と考えています。

顧客の声を解釈してニーズ(※)を把握し、企業の持つ技術力・ブランドへの思い、会社の理念を反映して製品へ投影し、「その企業なりの答えを出す」のが本来の姿勢だと考えています。
※「ニーズ」と「ウォンツ」を区別することもありますが、今回は区別せず全て「ニーズ」と表現します。



●待ち時間の不満への対策は?



ここで別の事例に着目します。よく顧客満足度調査で「ホテルなど施設のエレベーターの待ち時間が長いこと」が不満点として挙げられることがあります。この場合、顧客の声を重視し、エレベーターを速くするなど、「待ち時間そのもの」を短縮できるでしょうか?エレベーターを後から2倍速などにできれば良いのでしょうが、それは現実的には難しいでしょう。

よくある解決方法としては、エレベーターのすぐ
横に大きい鏡を設置し、関心をエレベーターではなく「服装・髪形などの身支度」にシフトする、綺麗な花を置いてそちらに関心を持ってもらう、落ち着いた音楽を流す、など「待ち時間のイライラから解放する」という施策が取られます。

似た事例として、ヒューストン空港では、手荷物引渡所(Baggage Claim)での「荷物受取までの待ち時間が長い」とのクレームが多く寄せられたそうです。そのためわずかでも時間短縮をする改善が実施されましたが、クレームは以前同様です。

そこでやや意外な方法ではありますが、不満改善のためになされたのは【動線をむしろ長くし、通路を遠回りにし、手荷物引渡所までの距離を長く】してしまう施策でした。

その結果、今まで「待ち時間」だった時間は「歩いて移動する時間」に変換され、手荷物引渡所につくとすぐに荷物が受け取れるようになり、苦情はほぼ0に激減したそうです。「飛行機を降りてから手荷物を受け取るまでの時間」は全く変わっていないにも関わらず…です。



 

これらの事例から言えることは、顧客の声そのままではなく、「解決すべき問題は本当にそこなのか?」という顧客ニーズの解釈・昇華を行うことで、表面的に見ると不満点のはずの「荷物受取までの時間」が変わっていなくても、「問題を解決することが可能」ということです。

顧客の求めるものを「ニーズ」、企業の技術などを「シーズ」と言いますが、ニーズ把握を出発点に、シーズを活用して商品化し、「解釈・昇華させた形でニーズを実現する」ことが解答であると私は考えています。

●恋愛で例えると…

マーケティングの話は、よく「恋愛」に例えられます。ここでもその伝統的なアプローチにならいましょう。

まずあなたが男性で、意中の女性をデートに誘うとした場合、彼女は何が好きなのか知ろうとする(リサーチする)のではないでしょうか。コミュニケーション術を駆使し、彼女の友達へのリサーチの結果、「ジブリ作品が好き」「特に『となりのトトロ』や、『魔女の宅急便』、『耳をすませば』が好き」だと判明しました。

では、あなたはデートへのお誘いに「ジブリ作品を一緒に見よう」…と誘うのでしょうか?

これが「顧客の声そのまま」の状態です。もちろん、今映画館で上映している作品を適当に見るよりはるかにリスクは低く、良い方向性ではありますが、いまひとつ何か足りない感じがしないでしょうか。

では、どうすれば良いのでしょうか。

同じジブリでも映画ではなく「ジブリ美術館」へ行く、
魔女の宅急便に出た「ニシンのパイ」などが食べられるというジブリ好きご用達のレストランへ行くなど、ジブリ好きの心理・ニーズを解釈し、もっとハートをグッと掴めそうなプランを提案しないでしょうか。
(このレストランは中央線沿いに実在します。僕は非常に気になりますが、ジブリファンの方がもしグッとこなければご容赦ください。)

これが、「解釈・昇華させた形でニーズを実現する」ことにあたります。それに対して彼女(顧客)が何をしたい、何が欲しいと言ったことそのままを提供するのが、「顧客の声そのまま」の状態です。

●最後に

この「顧客の声を解釈・昇華してニーズを実現」の部分は、企業の持つ技術や、ビジョン、信念によって答えが変わってくるはずです。先ほどの例でいうと、「ジブリ好きご用達のレストラン」といった発想は、何らかの別の経験から派生して生まれてくるものであり、この部分は人・企業によって異なります。

アンケートを実施しても、「同じように調査をすれば同じような結果が出てくる」のは特に定量調査では当然であり、顧客の声そのままに商品が作られれば、「各社ともに同じような商品」が出そろってしまうことになります。
そうすれば、インパクトはさらに減少し、あまり売れなくなるのも道理です。

繰り返しになりますが、「顧客の声そのまま」で良しとするのではなく、「顧客の声を解釈・昇華してニーズを実現」という発想で、顧客の期待をいい意味で裏切った商品・サービスを作るために、マーケティング・リサーチをご活用ください。

そして、アンケートだけでは豊かな発想へ導くことが難しい場合、前回ご説明させて頂きましたような、様々な手法もあわせてご検討ください。


 

 

 

 

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