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マルチスクリーン時代の消費者行動を探る

 PC、スマートフォンにとどまらずタブレットやTV、ゲーム端末など様々なデバイス(スクリーン)がインターネット接続機能を持つようになり、消費者がインターネット上のコンテンツやサービスを利用できる環境が劇的に変化しています。

 トリプルスクリーンとよばれる、テレビ、PC、モバイルという組み合わせを考えるにとどまらず、より広い視野を持って消費者のデジタル行動のトレンドを把握することが、今後ますます重要になってきます。いったい消費者は、「どのスクリーンから」「何を視聴し」、「どんなサービスを利用」しているでしょうか?本コラムではニールセンが行ったマルチスクリーン(7つのスクリーン)の利用動向調査「デジタルコンシューマーデータベース」をもとにスクリーンとコンテンツの関係を探っていきたいと考えています。

中村 義哉
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第3回:複数スクリーンの同時利用状況と、購買プロセスにおける関わり

 最終回は複数スクリーンの同時利用状況と、購買プロセスにおける関わりをみていきたいと思います。

 まずはどのくらいの人が複数スクリーンを同時利用しているのかをみてみます。複数スクリーンを同時利用することがあると回答した割合は68%と、多くの人が2つ以上のスクリーンを同時に利用していました(図13)。男女別ではその割合に差がありませんでしたが、年代別では若年層ほど割合が高くなり、性年代別では10代女性が最も同時利用割合が高くなっていました。(同時利用者中10%)。

 同時利用されるスクリーンの利用割合としては、テレビとPCがともに約30%となり、次いでスマートフォンが15%で、3つのスクリーンで全体の75%を超える形となりました。図14は、複数利用の際の組み合わせをみたものになります。これをみるとテレビとPCの組み合わせが最も高い割合となっていますが、それ以外では利用されるスクリーンは異なるものの、据え置き型端末×モバイル端末の組み合わせが主流の使い方となりました。今後スマートフォンが普及していくことで、この割合は大きく変化するものと考えられます。

図13

出典:Digital Consumer Database 2012




図14

出典:Digital Consumer Database 2012

 では消費者は複数のスクリーンを同時利用する際に何を行っているのでしょうか。図15は同時利用の際に行っていることのTOP5をみたものです。最も割合が高かったのは「テレビ番組や映画を観る」で男女とも半数となりました。テレビや映画を視聴しながら同時並行で他のスクリーンでそれ以外の行動をとっていることが分かります。次いで割合が高いのが、「ニュースや金融情報、天気予報などの情報を収集する」で、これは男性の回答割合が高くなりました。一方で、「通話やチャット、メールをする」は女性の回答割合が高かったです。図にはありませんが、それ以外で特徴がみえたのは、女性では「ブログやレビューを書いたり、Q&Aサイトへ投稿する」「グルメ情報や料理・レシピについての情報収集」の割合が特に高く、男性は「ラジオや音楽を楽しむ」「投稿動画を観る」の割合がやや高くなっていました。これらのことから、複数同時利用をしている際の一方のスクリーンでは、男性は自分自身の趣味に繋がるコンテンツを直接楽しみ、女性はコミュニケーションを行っている傾向がみえてきました。

図15

出典:Digital Consumer Database 2012

 
 続いて、商品購入とスクリーンの関係性をみていきたいと思います。

 商品の購入に際して「その商品に関心をもったときに主に利用していたスクリーン(メディア)」「その商品を比較検討したとき主に利用していたスクリーン(メディア)」「その商品を購入すると決めたときに主に利用していたスクリーン(メディア)」を集計した結果が図16になります。

 ここでは代表的な商品として「化粧品」「アルコール飲料」「電化製品」を例に挙げ、それぞれの商品の購入と使用していたスクリーンの関係をみていきます。

 まず、化粧品では、各購買フェーズで利用される割合に変化がみられたスクリーンは、テレビでした。「関心」から「比較検討」「購入」とフェーズが進むに従い、割合が徐々に減少している様子が分かります。他には、主に利用していたスクリーンとしてスマートフォンを挙げる割合が他の商品より高く、関心~購入のいずれのフェーズにおいても5%強の回答者がスマートフォンを主に利用したと回答していました。同様に、他の商品との比較において雑誌を利用した割合が高いのも化粧品の特徴となりました。

 一方、アルコール飲料は商品に関心を持つフェーズでテレビを利用していたと回答した割合が特に高く、今回調査対象とした全7商品の中でも最も高くなっていました。ただし、「比較検討」「購入」フェーズではテレビに対する割合は下がり、反対に「交通/屋外広告・店頭」に対する割合が上がっています。アルコール飲料の「交通/屋外広告・店頭」および「家族や知人」に対する割合も全7商品中最も高い値を示しています。

 最後に、電化製品は「関心」「比較検討」「購入」いずれのフェーズにおいてもPCを利用した割合が非常に高いのが特徴的です。また、他の商品と比較するとスマートフォンだけでなくタブレットに対する割合が高いことも興味深い点となりました。


図16



出典:Digital Consumer Database 2012

 以上のように、購入する商品の種類および購買の段階によって利用されるスクリーン(メディア)の特徴がみえてきました。分かりやすい例でいえば、電化製品や化粧品はアルコール飲料と比較してインターネットを利用した割合が高くなっていました。これは商品自体の訴求内容の複雑さに連関していると考えられます。つまり、テレビや屋外の広告だけでは良さや内容が分かりにくい商品ほど消費者はPCやスマートフォンを用いて商品理解を試みていると考えられます。いずれにしても、商品によって消費者の接触媒体のプライオリティが大きく異なることが分かりました。

 また、今回の調査結果では特にスマートフォンの存在感にも着目しておきたいと思います。実は今回の商品の購入者の従来型携帯電話の保有者数はスマートフォンの保有者数を上回っていました。それにもかかわらず、いずれの商品のいずれのフェーズにおいてもスマートフォンを利用すると回答した割合は、従来型携帯電話を利用すると回答した割合を大きく上回っていました。

 このことからも、スマートフォンが従来型携帯電話の単なる置き換えではないことは明らかです。今後、その保有率が上がるにつれて購買時に利用されるスクリーンとしてのスマートフォンの存在感は、ますます大きくなるでしょう。これがPCの利用率を押し下げるのか、それともPCはそのままで、その他のスクリーン(メディア)の利用率を押し下げていくのかは、今後注視していきたいと思います。



 以上、全3回を通して、マルチスクリーン時代の消費者動向を探ってきました。

 日常におけるテレビやPCの存在感は依然健在でしたが、今回の調査ではスマートフォンの躍進が目立っていました。タブレットは保有率がまだあまり高くないため浸透しているとは言い切れませんでしたが、新しい形のデバイスとしてこれからの動きに期待したいと思います。

 各スクリーンの利用動向では、性年代によって違いがみられました。特に若年層での利用動向には大きな特徴がみられ、スマートフォンとの関わりが深いことが分かりました。また、男性は情報収集を、女性はコミュニケーションを軸としてスクリーンと接している様子もうかがえました。さらに7割の人は複数スクリーンの同時利用をしているという状況でした。

 消費者が目的、用途によってスクリーンを使い分け、ひとつのスクリーンに集中している時間が短くなっている状況において、企業もコミュニケーションの方法を最適化することが、今後ますます重要になっていくと考えています。

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