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シビアな効果測定でマス広告を救え!

 ネットメディアの台頭によって、その存在感を薄めつつあるマス広告。特に、テレビCMは「広告の王様」として常に広告の花形であったものの、時代を経るごとに、その効果が疑問視されることが多くなってきた。そんなマス広告を救うカギとなるのが、シビアな「効果測定」の実施。いったい、どのような効果測定を行えば、テレビCMをはじめとしたマス広告が力強さを取り戻せるのか!? 『CM好感度NO.1だけどモノが売れない謎』(ビジネス社)の著者である株式会社テムズ代表取締役・鷹野義昭氏が、その現状と未来を語る!

鷹野 義昭
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第5回:コミュニケーション戦略としてのクロスメディア、その効果測定とは!?

 近年、広告展開の手法として、より一層注目を集めている「クロスメディア戦略」。従来型の「単純に打てば響く」広告の考え方から脱却し、各媒体がそれぞれの役割を持って「実売」に導くという有効性が評価され、多くの企業がこの手法を採用。テムズでも、2011年より、独自に開発したクロスメディア効果測定パッケージ「C・ROI(クロイ)」をローンチし、この流れを効果測定の立場からバックアップしている。では、クロスメディアとはいったいどのようなものなのだろうか? そして、どのようにして効果測定を行うのだろうか?

 

 

■メディアミックスは“露出”、クロスメディアは“仕掛け”

ーー今回は近年、各企業で一般化している クロスメディアについてお話をうかがいたいと思います。まず「クロスメディア」とはどのようなものでしょうか?

 

鷹野義昭(以下、鷹野):「クロスメディア」という考え方が一般的になったのは今から5~6年くらい前からです。それ以前は「メディアミックス」という手法が使われてきました。メディアミックスは、メインとなる一つの広告表現を用いながら、さまざまな媒体を使用してリーチを高めるという手法であり、テレビを見ない人でも新聞、雑誌などで広告に触れれば“リーチが拡大できる”という発想。一方のクロスメディアは、さまざまな媒体を使用しつつ、その表現も変更しながら購入に導く“しくみをつくる"という発想です。

 

ーークロスメディアにおいては、広告媒体だけではなく、広告表現も異なってくる?

 

鷹野:より正確に言えば、それぞれの広告の役割が異なるということでしょう。
 例えば、「ジョア」をクロスメディアで展開するならば、剛力彩芽さんが歌うテレビCMでリマインドを獲得し、新聞やチラシなどの紙媒体で商品説明と宅配販売店の情報を盛り込む。さらにそこからwebに誘引し、より細かなキャンペーン内容などを含めた情報提供、また、コンビニなどの売場で“購入への最後の目印”としてPOP広告を配置するという流れが考えられます。

 

ーーつまり、1人の消費者が、購買に至るまでの導線づくりが「クロスメディア」ということですね。

 

鷹野:そうです。購買に至るまでの仕掛けの導線をつくるコミュニケーション戦略です。ですから、広告だけでなく、PRやSNS上の口コミなどもクロスメディアには含まれます。

 

ーーメディアミックスからクロスメディアへという流れからは、「広告」に対する考え方の変化が見えてきますね。

 

鷹野:メディアミックスは「ターゲットにリーチをすればいい」という、ある意味“昔の広告屋”的な発想ですね。クロスメディアでは、ただリーチをするだけでなく、どのようにして実売まで至るのかを捉える必要があります。この発想の背景には、消費者が能動的に情報を求めるインターネットの急速な普及がありますが。

 

 

■購買までの“導線”が見えるクロスメディア事例

 

ーークロスメディアにはどのような事例があるでしょうか?

 

鷹野:テムズが実際に携わった小売店の例で言えば、まず値引きセールのキャンペーンとしてテレビCMを出稿し、セール実施の認知を高めます。そして、店舗の近くを通る電車内でも交通広告を出稿し、リーセンシー効果から実際にお店まで足を運んでもらう。また、テレビCMからも交通広告からもインターネットに誘引することで、セールの詳細な情報を伝える。また、この小売店の場合はインターネットに誘引することで、通販サイトでの購入も促しています。

 

ーー確かに、購買までの消費者の行動ステップに合わせて広告が配置されていますね。

 

鷹野:他にもわかりやすのは、大正製薬の育毛剤「リアップ」です。この商品は、1本7,000円と育毛剤としては高額で、簡単に衝動買いや試し買いをできる価格帯ではありません。従って、まずCMで商品の存在やイメージを訴求し、効果効能については、新聞や雑誌で説得力をもって他の育毛剤との差別化をはかる。また、高価格のハードルと併せて、この商品は3カ月間継続して使用しなければならないので、消費者はより慎重になってwebで情報を閲覧するでしょう。リアップのサイトにはQ&Aやセルフチェックシートなどが用意されています。これで消費者の不安を払拭し、店舗に足を運ばせるのです。

 

ーーつまり、CMで初期認知とイメージ、新聞や交通広告などで商品についての内容理解、さらにwebで効果効能に対するより深い知識を与え、段階を踏みながら購入まで誘導する。

 

鷹野:そのとおりです。

 

ーー確かに、高額な商品を購入する場合はwebサイトを閲覧することは、いまや当たり前となっています。では、お菓子やジュースなど、単価の低い商品の広告の場合はどうでしょうか? あまりwebで検索し、内容をしっかりと理解してから購入するものではありませんが。

 

鷹野:その場合は、お菓子に付随するプレミアムなどでwebに誘引する仕組みをつくるのです。プレゼントキャンペーンや、タレントの情報などをwebサイト上に掲載し、商品を訴求します。例えばサントリー「BOSS」であれば、プレゼントキャンペーンを実施して、消費者との絆を深めるとともに口コミの形成を誘導する。webの閲覧から直接商品の販売には結びつく可能性は低いでしょうが、「ファンになってもらう」「商品に注目してもらう」というプロモーションの手段として有効でしょうね。

 

ーー同じwebサイトでも、商品によってその意味は違う?

 

鷹野:機能的価値が高い商品の場合は、商品内容や使い勝手などを説明する。ブランド品などの象徴的価値の高い商品は、ブランドストーリーやイメージを訴求する。日々使う身近な商品であれば、親近感を醸成し商品との距離を縮め“ファン”を育成する、とそれぞれ役割も異なってきますね。

 

 

■クロスメディアの効果を測定する

ーーそこで、テムズではクロスメディアの効果測定パッケージとして「C・ROI(クロイ)」を開発した。複雑なクロスメディアを相手に、どのように効果測定を実施するのでしょうか?

 


鷹野:購買に至るまでに、どの媒体が「認知」「理解」「興味」など各心理変容の段階に有効だったかを、調査データから指標化するのが「C・ROI(クロイ)」です。例えば、従来の多くの調査では最終的な「購買のきっかけ」しか聞かないものが多い。けれども、それでは必然的に購買までの距離が近い「webサイトが有利」で、初期認知などを獲得するための「テレビCMの効果は低く」評価されてしまいがちです。

 

ーーつまり「認知」や「内容理解」などパーチェスファネル上で課題となるボトルネックに対し、有効な媒体を見出すことができる?

 

鷹野:そのとおりです。ただし、各段階への影響度を従来型のアンケート調査でみられるような「マルチアンサー」の回答形式では、正しく定量化することが難しいんです。

 

ーー「マルチアンサー」とはどのようなものでしょうか?

 

鷹野:一般的なアンケートでは、購入のきっかけとなった媒体を聞いていますが、そのほとんどが、“YES”の項目を選択する「マルチアンサー」の回答形式です。これでは、分析の際に“1・0データ”でしか取り扱えない。例えば、「テレビCM」と「ラジオCM」に“YES”と答えれば、購買に対する寄与が1:1の関係になってしまいます。

 「C・ROI(クロイ)」では、動機となった媒体の影響度の重み付けをしているので、単純に接触率の高い媒体が上位になるということではありません。商品購入の際の人の気持ちは、例えば「テレビが5割でラジオが2割」といったように、もっと複雑なものでしょう。

 

ーー上図の「購買行動に影響した媒体」のイメージを見ると、テレビCMから直接購買に至る導線だけでなく、新聞、雑誌、Webサイト、あるいはSNSなど、消費者はさまざまなパスを通って購買に至っていますね。

 

鷹野:購買に至るまでのパス(通路)を見ることで、正しく複数の媒体の効果を定量化できます。また、パスの太さを見ることによって、その通路を経由した消費者マインドのボリュームもわかる。例えば「実売」だけに焦点を当てると、その直近であるwebからのパスのボリュームが最も多いですが、webにたどり着く前にはCMが誘導していることがわかります。近年「CMが効かない」と言われていますが、直接実売に至るパスしか見ず、その前段階を無視すれば間違った結論となってしまうでしょう。

 

ーー確かに、CMが放送されることによって、他のメディアで情報を得てみようと感じることも多いです。また、他媒体に出稿している広告を記憶しやすくなったり、理解が深まったりするという効果がありますね。

 

鷹野:ですから、コミュニケーションの全体像をしっかりと視野に入れなければならないんです。施策がコミュニケーションに対してどのように寄与したかを把握することで、購買にまでつながる消費者の経路が見えてきます。

 

ーー広告媒体だけでなく、「天候」や「財布の状況」「商品・企業に対するイメージ」など、企業の直接的な施策以外の要因は考えなくてよいのでしょうか?

 

鷹野:そういった要素も購買にはとても重要です。例えば、ブランドイメージならば、過去実施した広告のパワーが多分に蓄積されています。

 

ーーそうした、「ストック効果」が、購買に大きく影響することもあるのでしょうか?

 

鷹野:ある食品メーカーで、首都圏と近畿圏でCMキャンペーンの広告効果測定調査を実施しました。すると、首都圏の方が圧倒的に購買にまで結びついたことが判明したんです。その原因を細かく検証したところ、近畿圏では企業名が十分に認知されておらず、商品に対しての安心感が不十分だったと考えられます。
 この企業では、首都圏、近畿圏とも全く同じクリエイティブで商品を訴求するCMを出稿していました。しかしながら、近畿圏で売上を伸ばすためには「企業名の伝達に注力」し、少し遠回りになりますが「ブランドイメージの形成」に向けたCMを展開すべきだったでしょう。

 

ーー同様に、商品力や価格、流通といった「非コミュニケーション要因」も、購買行動に非常に大きな影響を与えますよね。

 

鷹野:はい。それらの非コミュニケーション要因による影響も正しく掴むことで、我々の「C・ROI(クロイ)」は“広告のROI”を明確化、見える化することができるのです。

 

 

※最終回となる次回は「広告のROI」についてうかがいます!

 
【取材・文・写真 萩原雄太】

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