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スパイスボックス“デジタルエージェンシー進化論”

日本初のデジタルエージェンシーとして企業のデジタルコミュニケーションを総合プロデュースするスパイスボックスが、広告業界で活躍するプロフェッショナルをお招きして語る対談コラム。

株式会社スパイスボックス
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第2回-1:pixiv上谷隆宏氏、ファンタジスタ歌磨呂氏と語る“デジタルエージェンシー進化論”(前編)

第2回目のゲストはお二人。ユーザー数500万人を突破したイラストコミュニケーションサイトpixiv(ピクシブ)の開発者である上谷隆宏氏(ハンドルネーム「馬骨」)と、独特の色使いでインパクトある作品を制作、最近ではミュージックビデオのディレクションなども手掛けるファンタジスタ歌磨呂氏をお迎えしました。spiceboxクリエイティブディレクター神谷を交え、上谷氏にはpixiv立ち上げ時の話、歌磨呂氏には、熱狂的なファンも多いアートワークの制作秘話などをお聞きします。

 

神谷  spiceboxが主戦場とするが広告業界では、情報の流れが明らかに変わってきた感覚があります。これまでは、ネタと読者(消費者)が一対一の関係だったものが、最近では、その間に、二次創作者といえるファンタジスタ歌磨呂さんのようなプロのクリエイターもいれば、pixivに参加している「○○を描いてみた」や、ニコニコ動画で「踊ってみた」「歌ってみた」の作品をアップしているようなクリエイターがいて、その人たちが元ネタをどんどん大きくしている流れができています。デジタル系の広告クリエイターからすると、今までにない面白い流れになってきたように思います。

そのクリエインションの流れなかで、一番光っているクリエイターの一人が歌磨呂さんだと思います。pixivとも仲良かったり、アマチュアのクリエイターとも交流あったりしながら一緒に創ってモノを提供したりとか、そのダイナミックな動き方というのはすごく今っぽいなという印象があります。今回の対談では、お二人と一緒にpixiv、ニコ動の出現で情報の流れやクリエーションの何が変わったか?ということについて話してみたいと思います。

 

 

pixivの初心を思い出させてくれた「お絵描き楽しす」

 

神谷 馬骨君(上谷氏)とは、以前にいた会社が一緒だったんです。当時から天才プログラマーで、pixivも家にこもって作り上げてしまったという。そうしたら、自然とコアなファンがついてきたという。当時は、窓を開けるとファンがいたんでしょう?

 


上谷隆宏氏上谷
 2,3人くらいの人が自宅まで来ちゃったという感じです(笑)。

 

神谷 コアなファンがついて馬骨ファンとpixivファン。そしてそのファンがファンを呼んでという感じで増えていったよね。で、実は今日、馬骨君に会うのが11年ぶりなんです。

 

歌磨呂 え!?11年間、全然連絡はとりあっていなかったんですか?

 

上谷 僕がクビになっちゃたんですよ(笑)。

  

 

 

 

神谷 僕とはチームは違ったんですが、当時彼がアルバイトで働いていたんです。でも、全然会社に来ないんですよ(笑)。三日に一回くらいしか来ない。みんな「彼ってアルバイトだよね?」って(笑)。当時から、すごくパンクな感じでした。

 pixiv開発当初は、これほどヒットするとは考えていなかったと思うんだけど、今では500万人以上のユーザーが集まりました。この状況を改めてみて、どう思っていますか?

  

上谷 pixivは、ユーザーのためというより、自分のために作ったんです。以前からイラストが好きで、お気に入りのイラストレーターのリンクを辿ってチェックしていたんですが、それが面倒臭くて、自分の好きなイラストレーターが集まってくれたらいいなと思ってpixivを立ち上げたんです。

はじめはブログを集めるサービスにしようと思ったんですが、当時のイラストレーターたちはブログを使っていなくて、Flickr*1を見て、こういうのが良いんじゃないかなというところからはじめたんです。作った時が27歳で、いい加減に何かしなきゃという気持ちもありました。

*1Flickr…写真共有サイト。SNS的にユーザー同士のコミュニケーションの場にもなっている。

 

神谷 pixivの代表である片桐さんとはどんな出会いだったんですか?

 

上谷 合コンで知り合いました(笑)。この会社の設立メンバーである坂上と僕が専門学校の時からの友達で、みんな人生で初めての合コンだったということもあって、人数が足りなくて、彼が僕に声をかけてくれて。そして坂上と片桐がもともと友達でという…。

 

神谷 結構古くから付き合いなんですよね。

 

上谷 そうですね。pixivを立ち上げた当初は、ただ単にイラストが集まるサイトがあればいいなと思っていたんです。一年くらい経過して、投稿されたあるイラストレーターさんのマンガ作品で、下手な絵ばかり描いて叩かれていたピクシブたんが、死にもの狂いで練習して上手くなった時に、過去の下手な絵を消そうとするんですけど、昔の絵をみて「最近、大事なことを忘れていた」と気づくという話があって、この作品の中にあった「お絵描き楽しす」って言葉が、すごく良いなと思ったんです。それで、単にイラストを集めるだけでなく、この「お絵描き楽しす」を理念にしようということになりました。

*2 ピクシブたん…pixivを擬人化したキャラクター。決まったキャラはおらず描き手の自由な発想で描かれるのが特徴。

 

神谷 そうなってくると、pixivがユーザーとどう向き合っていくかというスタンスがガラっと変わってきますよね。楽しんで描いてもらうために、描きやすい環境をつくることもそうだし、ネタをもっと提供したりとか、サービスっぽくなってきますよね。

 

ユーザーは、自分の想いや感動を他人と共有できるテーマを求めている

 

神谷 最近、pixivさんが、サントリーのC.C.レモンの缶に、C.C.レモンを擬人化したキャラクターを募集して、印刷して募集して商品として売るというキャンペーンがあったんです。ピクシブたんあたりがはじまりだと思うんですが、企業や商品をイメージしたキャラクターを作ってもらうというのが、爆発的に人気になるんですよね。なんでイラストレーターさんたちはピクシブたんのようなキャラクターたちを描きたくなるんですかね?

 

ファンタジスタ歌磨呂氏

 

歌磨呂 ピクシブたんって、描くときのルールはあるんでしたっけ?髪の毛が青いとか。

 

上谷 いえ、ないですね。

 

歌磨呂 テーマが欲しいというのがあるんですかね。インターネットカルチャーって共有感が軸みたいなところがあるじゃないですか。みんなで分かち合って、究極の馴れ合いを目指すみたいなところがあって、それに対しての依り代のような存在が必要で、初音ミクなんてまさにその象徴だと思うんですけど。なんか、お題があればそれでいいんですよね。それをみんなで描いて、想いを共有するというか。

 

神谷 たしかに、自由にキャラを描いてみても、それが良いものなのかどうか分からないですよね。その点、pixivはイラストを公開したときに、「そうそうそう」と言ってくれる人が何人いるかでそれが喜びに変わってくるみたいな。共感してくれる人が1,000人もいたら、だいぶうれしいというか。

 

歌磨呂 pixivができる前は、プロじゃない現場で絵を描く人たちって、絵を描きながらもそれを発表する場所が限定されていたので、欲求が溜まっていたと思うんですよね。pixivがスタートした時に「うぉおお!待ってましたぁ!」って欲求があふれ出るんだけど、「で、じゃあ、何描いたらいいんだろう?」っていう依り代が必要だった。そこでピクシブたんみたいなテーマが誕生したんではないですかね。そこで一気に描きたい欲望が爆発するというか。

 

神谷憲司

 

神谷 なるほど。ピクシブたんが、想いを共有する時のよりどころになっているわけですね。

 

歌磨呂 初音ミクの時は、それが音楽だったんですよね。自分の曲を誰かに歌ってほしい、でも、歌う人がいない。アイドルに曲を歌わせたり踊らせたりしたい。そこに、初音ミクを出会わせたんですよね。楽曲を作ってボーカルに歌ってもらって、発表することができる。みんなの物として共有できる。初音ミクってそこが大きいんですね。文脈としては、ピクシブたんが盛り上がったのと近いと思いますね。

 

 

 

上谷 タイミングもよかったですね。ニコ動ができて、pixivが出来てという流れがあって、そのタイミングで初音ミクが出て。

 

神谷 ニコ動は、成熟したというか、若い人中心にみんな普通にニコ動見てますと言いますからね。コメントの弾幕の芸があったりとか、ライトなクリエイターも参加できるというのがありますね。

 

上谷 やはりみんなでやっている時の共有感は強いですよね。

 

神谷 たとえば、サッカーワールドカップの生中継など、強いコンテンツがあれば、みんなが場を共有できますが、そうでない場合は、それぞれが参加者になるというか、役割を担うことが必要なのかもしれないですね。pixivも共同で絵を描いていくとかありますよね。誰かが下絵を描いて、別の人が色付けして、みんなで作って広がっていく感じ。

 

歌磨呂 上谷さんは、最初はプライベートな感覚で作ったサービスが、劇的に広がっていくのを見るのは、うれしいですか?

 

上谷 最初は、忙しすぎて、余裕がなかったんですが、たくさん人が集まってくれるのは、とてもうれしかったですね。

 

 

 

 

後編表現する場を限定しない。360°に向けた作品づくりへ続く

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