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シビアな効果測定でマス広告を救え!

 ネットメディアの台頭によって、その存在感を薄めつつあるマス広告。特に、テレビCMは「広告の王様」として常に広告の花形であったものの、時代を経るごとに、その効果が疑問視されることが多くなってきた。そんなマス広告を救うカギとなるのが、シビアな「効果測定」の実施。いったい、どのような効果測定を行えば、テレビCMをはじめとしたマス広告が力強さを取り戻せるのか!? 『CM好感度NO.1だけどモノが売れない謎』(ビジネス社)の著者である株式会社テムズ代表取締役・鷹野義昭氏が、その現状と未来を語る!

鷹野 義昭
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第3回:広告効果測定の落とし穴! データを活用するか、データに縛られるか

 

 シビアな広告効果測定は、CMの改善や広告担当者の成果の“見える化”のみならず、PDCAサイクルによる企業の健全な成長にも寄与すると語られた前回。真実を明らかにする効果測定だからこそ、その結果を受け入れることによって、さらなる広告活動の発展が見込めるだろう。では、各企業では、いったいどのように効果測定を活用しているのだろうか? そして、活用のために心がけなければならないこととは!?

 

■数字に縛られないクリエイティビティ

ーー前回は効果測定に基づく具体的なCMの改善事例や、中間指標を設定することの重要性をうかがいました。テムズでは、調査結果からCM改善策まで踏み込んで提案されるのでしょうか?

 

鷹野義昭(以下、鷹野):改善策の提案まで行うか、アドバイスに留めるかは、求められている役割によって異なります。しかし、「調査を行い結果を渡して終了」ということはほとんどありません。常に、そこから一歩踏み込んだ仕事をしています。

 

ーーテムズが強いコンサルティングという側面ですね。では、そんな鷹野さんの目から見て、この企業のコミュニケーション戦略はうまくいっていると感じるものはありますか?

 

鷹野:キリンは広告に企業ブランドの統一感があり、とてもうまくやっていると思います。キリンビバレッジを含めて、「キリン」というプラットフォームの上に、「午後の紅茶」や「一番搾り」などの各商品ブランドがうまく乗っている印象です。震災後、冒頭の「キリン」のサウンドロゴは控えられましたが、CMの扉に必ず挿入される企業ロゴは、今でも統一感や印象付けに有効に働いていますね。全体的に、うまくデータを活用しながらも、数字に縛られないクリエイティビティを実現しているように感じます。

 

ーーテムズはデータを出す立場でもありますが、数字に縛られすぎるのもよくない、と?

 

鷹野:そうですね。もちろんクリエイティブが、とんでもない方向に行ってはいけません。ですが、やはりクリエイティブジャンプがないと、いい広告はできない。データはこのジャンプに向けた方向性を見出すものなんです。逆に、花王はとてもマーケティングに強い企業ですが、やや数字に寄りすぎてしまっている感じを受けます。CMで重要な「面白み」や「遊び心が」もっとあっても良いのではないでしょうか。確かに安全・確実な選択をしているのですが、数字に縛られ過ぎてしまうと、クリエイティブの無限の可能性を引き出すことが難しくなってしまいます。

 

ーーデータはあくまでも基礎でしかないということですね。

 

鷹野:数字がクリエイティブの蓋をしてしまっては元も子もありません。確かに数字に真摯に対峙することは重要ですが、あくまでも土台として考えるべきでしょう。

 

■「送り手目線」のCMは嫌われる

ーー特にテレビCMに限って、戦略に優れたものはありますか?

 

鷹野:ヤクルト「ジョア」の剛力彩芽さんが歌っているCMはとてもいいと思います。ジョアは何十年と続いているブランドですが、近年リマインドが弱くなっているにもかかわらず、2008年にオンエアされた深津絵里さんのCMからしばらく出稿がありませんでした。今回、剛力さんを起用したことで、これまでの古いブランドイメージが一新され、活性感が生まれた印象を受けます。また、その内容もシンプルに剛力さんを使い、商品名を音楽にのせてストレートに訴求しており、非常に評価できると思います。まさに、「タレント力で商品を売る」CMの基本形といえるでしょう。

 

ーー一方、これはまずい……というCMも?

 

鷹野:ははは、なかなか立場上、具体的な企業名は出せませんね。

 

ーーそこを何とかお願いします!

 

鷹野:では、某生命保険会社としましょう。具体的なCMはご想像にお任せします。この一連の企業CMは、「我々はお客さまのために一生懸命やっているんだよ」という自社員の努力を示しているのですが、いわゆる「送り手目線のCM」になってしまっており、企業側の自己満足を感じてしまいますね。実はそういった素材ほど経営層をはじめとする社内からのウケがよく、プランが通りやすいんです……。しかし、会社の自己満足のようなCMでは、視聴者に届きにくいのは当然でしょう。

 

ーー確かに「内輪」の空気を感じるCMに対しては、好感よりもむしろ反発を抱いてしまいます。

 

鷹野:現代の視聴者は高いリテラシーを持っていますから、「CMで言っているから」「あのタレントが言っているから」という安心感は、かつてに比べるととても弱くなっているんです。視聴者と真摯に向き合いながら、信頼関係を結ぶ堅実な努力をしている企業かどうかはすぐに見抜かれてしまいます。

 

ーー経営不振が報じられているシャープは、いまだにCMを出稿していますね。見方によっては「CMを出稿している場合ではない」という意見も聞こえてきそうですが……。

 

鷹野:戦略としてCMを続けるのは正しいでしょう。CMは発電所のようなもので、一度出稿を止めてしまうと、視聴者から“冷えた”ブランドと印象づけられてしまい、復活させる際にはこれまで出稿していた以上のパワーがかかってしまうんです。かつてのJALもそうでしたが、少ない出稿量でも継続的にCMを打っていくべきでしょうね。

 

■情緒的なCMの価値とは?

ーー今後、テレビCMはどのようになっていくと思いますか?

 

鷹野:広告収入は、民放各局のビジネスの柱ですから、当然テレビCMはなくなることはありません。
そして、テレビCMの圧倒的なパワーや到達効率を考えると、広告を出すスポンサーがいなくなることも考えられないでしょう。ただし、「テレビCM単体で物を売ろう」というこれまでのコミュニケーションデザインはどんどん少なくなっていくはずです。テレビCMは他の媒体と融合し、クロスメディアの中のひとつとして機能していくでしょうね。かつて、テレビCMは「広告の王様」と言われてきました。しかし、これからはあくまでも数あるメディアのひとつであり、その特性を踏まえた上で使いこなされていくでしょう。

 

ーーその時、効果測定のあり方にも変化が求められますか?

 

鷹野:テレビCMはネットとは異なり単一方向のメディアです。効果測定を行い、視聴者の意見に耳を傾けることで、視聴者側からの通路を開拓しなければなりません。コミュニケーションを双方向にし、チェック機能を働かせなければ、それがどのような効果をもたらしたのかが見えにくいし、結果を真摯に見て判断することもできません。これをするかしないかは、テレビCMにとって、とても大きな差になります。

 

ーーつまり、アンケートによって視聴者との双方向のコミュニケーションを実現する?

 

鷹野:そうです。まさに正しい方法の広告効果測定調査が、視聴者側からのパイプとなるのです。近年、企業側は売上の拡大、利益の増大にとらわれてしまい、内容理解型のCMが増えています。「この商品は、あなたにとってこんなにメリットがありますよ!」「安いですよ!お得ですよ!」といったタイプのCMが目立っています。そういったCMは、視聴者にとって楽しめるものなのでしょうか?

 

ーー確かに、CMそのものを楽しむことはできません。

 

鷹野:その結果、視聴者が離れてしまい、CM自体が見られなくなってしまいます。正しい広告効果測定を通して、前回お話した「認知・記憶」や「興味」さらには「企業イメージ」といった「中間指標」への効果を明確化し、購買の深層心理にかかわる指標までキチンと見れれば、企業側も「夢」や「楽しさ」といった、情緒的なイメージ醸成の重要性に気づくのではないでしょうか。それらは企業にとってすぐに売上に反映されるものではありませんが、深層心理に残ってブランドイメージを形成し、長い目でみると非常に有効な資産となるのです。

 

ーーCMの効果は直接的な売上だけではない。

 

鷹野:そうです。

 

ーーでは、そういった視聴者にとっての「夢」や「楽しさ」といったイメージの効果も定量化できるのでしょうか?

 

鷹野:もちろん当社では、そういった深層心理の曖昧なものまで「見える化」させます。そういった価値も効果測定によって定量化することが当然の世の中になっていけば、大切な構成要素の一つとしてむしろ削ぎ落とされることはありません。メジャーブランドと呼ばれる商品やサービスは、これまで「遊びの要素」や「楽しみ」も大事にした広告クリエイティブで、テレビCMを出稿してきました。だからこそ、日本全体に知れわたり、確固たるイメージ資産を持ったブランドになることに成功したのではないでしょうか。

※……次回は「広告クリエイティブの定量化」についてうかがいます。

【取材・文・写真 萩原雄太】

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