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シビアな効果測定でマス広告を救え!

 ネットメディアの台頭によって、その存在感を薄めつつあるマス広告。特に、テレビCMは「広告の王様」として常に広告の花形であったものの、時代を経るごとに、その効果が疑問視されることが多くなってきた。そんなマス広告を救うカギとなるのが、シビアな「効果測定」の実施。いったい、どのような効果測定を行えば、テレビCMをはじめとしたマス広告が力強さを取り戻せるのか!? 『CM好感度NO.1だけどモノが売れない謎』(ビジネス社)の著者である株式会社テムズ代表取締役・鷹野義昭氏が、その現状と未来を語る!

鷹野 義昭
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第2回:“正しい”広告効果測定の方法とは?

 「視聴の質」が低下し、テレビの媒体価値が下がっている現在だからこそ、シビアな効果測定を実施することがテレビCMの影響力を明確化させるという鷹野氏。では、その効果測定の方法とはいったいどのようなものなのだろうか? 今回は、具体的なCMの効果測定手法と事例に的を絞ってお話をうかがった。

 

■まだまだ甘い効果測定の手法

ーー前回は、効果測定によって媒体価値を明確にすることで、テレビCMが再び活性化するというお話をうかがいました。テムズではCM効果測定パッケージ「CMストリーミングリサーチ」をはじめ、現在まで一貫してテレビCMにこだわりを持って調査・分析をしていますが、どういった企業のコンサルティングや調査依頼が多いのでしょうか?

 

鷹野義昭(以下、鷹野):食品や小売、不動産など業種は多岐にわたります。クライアントの多くはこれから効果測定をしたいという企業や、今実施している効果測定の方法に疑問を持っているという企業ですね。

 

ーーそのような企業では、すでに広告代理店が効果測定まで実施している場合も多いのではないでしょうか?

 

鷹野:そうですね。しかしそういった場合でも、テレビCMを展開している広告主から、広告代理店とは一線を画す『セカンドオピニオン』的な立場でプロジェクトへの参画を求められることもあります。CMに対する第三者からの視点が求められるケースですね。逆に、広告代理店に任せきり、というか広告代理店とお友達感覚で、疑問をあまり持っていない企業はうちのお客さんにはなりません。むしろ効果測定を行うことによってトラブルになってしまうこともありますから。

 

ーー効果測定によってトラブル……。あまり真実を知りたくない企業も多いんですね。

 

鷹野:企業というよりも広告を企画する担当者ですね。ですが、各企業も投資に対してシビアになり、年を追うごとに多くの企業が効果測定を取り入れるようになってきました。ただ、私の目から見ると、その方法にはまだ甘いと言わざるを得ない部分があります。

 

ーー「甘い」とは? 

 

鷹野:例えば、ある調査パッケージでは何も提示せずに「思い浮かぶCMで好きなものをあげてください」という純粋想起でモニターからの回答を得ます。それでは、CMの「人気投票」に過ぎませんし、クリエイティブ的な側面よりも、どれくらいのGRPを投下したかという出稿量が物を言います。また、インパクトの強い有名タレントを使ったCMも上位を獲得する傾向にあります。そのような調査によってランクインしても、費用対効果の高い「モノが売れる良いCM」であるとは必ずしも断言できません。

 

ーー確かに「甘い」と言わざるを得ませんね。その他に、調査の方法において気をつけなくてはいけない点はありますか。

 

鷹野:別の調査パッケージでは調査対象者にCMの動画を提示せず、紙の上でCMをストーリーボードなどの静止画として提示し、調査を行なっています。これでは、動きや音楽といったテレビCMの大切な要素を検証することができません。また、いろいろなCMに登場する人気タレントが出ていれば、別のCMと誤認される危険性も大きい。まだオンエアされていないCM素材の認知度が37%を獲得するなんていう調査結果が出てくることもありました。

 

ーーそのような調査では、結果の活用も難しいですね。

 

鷹野:効果測定調査から、CMの問題点や改善点が出てこないのでは意味がありません。曖昧な結果や甘い評価で喜ぶのは広告担当者や広告代理店だけ。もちろん、そのような調査パッケージの結果に、意味がないとは言いません。それぞれが、実績のある一つの評価指標であることは間違いない。ただ、調査手法の背景やデータの偏りについては十分留意する必要がありますね。

 

■効果測定によってCMクリエイティブを軌道修正する

ーーでは、鷹野さんが理想とする“シビアな”効果測定とはどのような調査なのでしょうか?

 

鷹野:しっかりと動画を見せながら、CMとしての要素を適切に調査することが大事だと思います。そうして得られるシビアな調査結果を真摯に受け止めることで、次の打ち手につなげられるのではないでしょうか。テムズでは、創業当時の20年以上前からCMを動画で見せることにこだわってきました。そして、CMの細部に渡ってまで、しっかりとリサーチを行うということが次の改善点につながると考えています。CMを調査対象者全員に動画で提示することで、出稿量とは切り離し、テレビCMのクリエイティブの部分だけを浮き彫りにすることができるのです。

 

ーーテムズの「CMストリーミングリサーチ」には、そのような鷹野さんの考えが反映されていますね。

 

鷹野:そうですね。これはCMを動画で提示するインターネットリサーチによるパッケージ調査なのですが、すでに基本の調査票が用意されており、即座にCMの評価が行えます。また、首都圏以外のエリアや特定ターゲットに対しても対応可能です。

 

ーーそうしたパッケージを活用して、効率よく消費者に届き、内容を伝えられる「いいCM」だったかを判断する。

 

鷹野:ただ、「内容を理解した人が60%だった」といったような調査結果の絶対値のみに満足してしまうのは早計でしょう。そのような数値が出たところで、それが他のCMと比較して高いか低いかが判別できないのであれば数字自体に意味がありません。テムズではこれまで1,000素材以上のCMを調査してきた結果から得られたノーム値がありますから、他のCMに比べて高い・低いといった水準が明らかになり、次の打ち手に繋げることが可能です。ちなみに、当社の持つノーム値で、内容理解度の平均値は64%ですから、60%はやや低いということになりますね。

 

ーーまた、効果測定を行うことによって、CM自体が磨かれ、改善されるという効果もありますね。

 

鷹野:ええ。私どもが調査を行ったある調味料メーカーでは、人気タレントを起用してファッショナブルなイメージを訴求したCMをシリーズ化していました。しかし、効果測定調査を行ったところ、イメージの醸成には成功していたものの、その商品そのものの特性をアピールできていなかったんです。この調査結果から、より商品の特性を訴求する方向にCMを改定しました。

 

ーーなるほど、そうやって「モノが売れるCM」へと改善されるのですね。

 

鷹野:また、ある損保会社のCMの効果測定調査を行ったしたところ、CMを打つ量が増えるとむしろ肝心のキービジュアルが薄れていってしまい、視聴者にそれが届いていなかった。そこで、もう一度キービジュアルを全面に押し出すことで、そのアイデンティティを明確化することに成功したんです。

 

ーーそういったCMの改訂は即座になされるのでしょうか?

 

鷹野:そうですね。スピード感のある調査を活用すれば可能でしょう。ある百貨店では、キャンペーンのために出稿したCMのクリエイティブがターゲットである若者に受けなかった。調査実施から即時に私どものレポートを提出し、調査結果に基づいて改善提案を行ったところ、即座にクリエイティブが変更されました。見かけ上はほんのわずかな変化だったのですが、CMに対する印象は大きく変わりましたね。

 

ーー調査レポートを活用して、CMも改善される。反省を活かして次に進むことができるということですね。

 

鷹野:ええ。CMにおいてもやはりPDCAサイクルが機能している企業は間違いなく進化していきます。

 

■効果測定に重視される中間指標の設定が「見える化」につながる

ーーそのほか、しっかりと効果測定を行うことは、広告主や代理店にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

 

鷹野:知恵を絞り出して広告担当者がつくった優秀な広告が、会社全体を潤わせるという構造を「見える化」することでしょう。真面目に業務に取り組んでいる広告担当者にとっては、その仕事がしっかりと数字で報われることになります。

 

ーー構造が見えるようになるだけで、広告担当者のモチベーションも大きく変わりますね。

 

鷹野:通販やダイレクトマーケティングなどの企業を除き、CMの出稿と購買行動とのリンケージやコンバージョンを証明することはとても難しいことです。そのため、効果測定の現場では「中間指標」を定めることが重視されます。「認知を拡大させること」「商品特性を理解してもらうこと」など、中間指標をKPIとして明確化すれば、CMの効果は曖昧ではなくなります。

 

ーー具体的にはどのような中間指標が定められるのでしょうか?

 

鷹野:その商品が何を必要としているかによって、重視される効果は異なります。例えば、サントリーの「伊右衛門」であれば、すでに抜群の認知度を獲得していますから、現在の課題はリマインドを高めてイメージを向上させるということ。一方、同じ飲料メーカーの「サンガリア」であれば、全国区での認知がまだまだ薄いので、認知度の獲得が課題になってきますよね。

 

ーーつまり、商品が抱えているコミュニケーション課題がそのまま目標となる中間指標となる。しかし、企業サイドからすれば「とにかく売りたい」ということになりがちではないでしょうか。

 

鷹野:「実売」だけを指標として見る姿勢が、あらゆる効果を曖昧にしてしまいます。実売だけを指標にした場合、売れなかったら『商品力』の責任にしたり、『流通』の責任にしたりすることができてしまいますよね。「ここまでは宣伝の仕事」「ここからは商品開発の仕事」と切り分けて、その効果を『見える化』することによって、責任のなすりつけ合いを回避し、売りにつながるマーケティングに進化させることができるんです。

※……次回は効果測定の「落とし穴」についてうかがいます!

【取材・文・写真 萩原雄太】

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