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シビアな効果測定でマス広告を救え!

 ネットメディアの台頭によって、その存在感を薄めつつあるマス広告。特に、テレビCMは「広告の王様」として常に広告の花形であったものの、時代を経るごとに、その効果が疑問視されることが多くなってきた。そんなマス広告を救うカギとなるのが、シビアな「効果測定」の実施。いったい、どのような効果測定を行えば、テレビCMをはじめとしたマス広告が力強さを取り戻せるのか!? 『CM好感度NO.1だけどモノが売れない謎』(ビジネス社)の著者である株式会社テムズ代表取締役・鷹野義昭氏が、その現状と未来を語る!

鷹野 義昭
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第1回:テレビCMに残された唯一の可能性

 テレビCMが効かない……。そんな言葉が広告業界で囁かれはじめて、はや数年が経過した。効果がはっきりせず、実売へのつながりを実感しにくいマス広告。かつて“王様”と呼ばれていたメディアに今、疑問が持たれている。だが、その一方、依然としてテレビCMが効率的なメディアであることは、多くの宣伝マンにとっても異論はないはずだ。では、テレビCMはどのような変遷を辿って現在のような姿になっていったのか? そして、いったいどこへ向かっていくのだろうか? 

 

■広告代理店では「真に正しい施策」を提案することができなかった

−−鷹野さんは、広告代理店のI&S(現I&S BBDO)勤務を経て、テムズを設立されました。いったいどのような経緯から独立されたのでしょうか?

鷹野義昭(以下、鷹野):1990年まで、I&Sのマーケティング部に勤務し、資生堂や明治、ブリヂストンといった企業のコミュニケーション活動に携わってきました。広告代理店で実感したことは、自分を含めアドマンはあくまでも広告を売る立場であるということ。当然ながら、マーケティングの結果には常に「広告を売る」という大前提があったんです。ですから、広告主にとって正しいマーケティング活動ができているかというと、必ずしもそうではないこともありました。


−−確かに、広告代理店としては自らが販売した広告を「効果がなかった」と言うのははばかられます。

鷹野:例えば、それが本当は必要のない施策だとしても「CMをやめましょう」という提案はできません。顧客である広告主・企業にとって有効な施策を提案するためには、広告代理店の内部ではしがらみが多すぎました。これを解消するためには、広告代理店の場から自分が出なければと感じたんです。当時は起業をするなどという大それたことは考えていなかったのですが、1990年にテムズを設立し、気づくと22年も経っていましたね。この22年で1,000素材以上のテレビCMの効果測定や分析を実施し、広告の継続実施の判断を含め、広告主に有効な広告戦略を提案してきました。

−−調査だけでなく、コンサルティングまで手がけるのでしょうか?

鷹野:そうですね。もともと、広告代理店に入社したのも、マーケティング活動における企業のコンサルティングを手がけたかったからでした。テムズでも、CMの効果測定だけでなく、その結果を踏まえた広告戦略の策定や、改善提案まで行なっています。調査は、目的ではなくあくまでネクストマーケティングの手段です。

 

■広告効果を曖昧にしてきたテレビCMに起こっていること

 

−−テムズを創業されてから約20年間で、やはり広告業界の考え方は大きく変わっているのでしょうか?

鷹野:当時は、広告の「効果」に対する考え方が非常に曖昧な時代でした。景気もよかったですし、今のように媒体が乱立していたわけでもありません。「お金があるからCMでも打っておけ」「競合がやっているから、うちもCMくらい打とう」という時代です。


−−広告会社からすれば夢のような時代ですね(笑)。

鷹野:一部の企業を除き、広告に、戦略や知恵といった考えが持ち込まれること自体が稀なことだったんです。ですから、当時の証券会社など金融系のCMを見ると、その多くがとてもひどい。マーケティング戦略もなく、クリエイターが好き勝手に創った中途半端な芸術作品のようなCMが目立っていました。

−−確かに、それでは広告効果も期待できません。

鷹野:厳しく言うと、これまで広告代理店と企業の広告担当、テレビ局などの媒体社との三者のもたれあいによって広告業界は成り立ってきたんです。ですから、都合の悪い結果には、フタをして目をつぶってしまう風潮が続いていました。すべてが「うまくいっている」ということで、自分たちの仕事を否定されない三者にとってはハッピーだったかもしれませんが、これでは、効率のいい広告がつくれるはずもなく、広告に投資をしている経営側はたまったものではありません。

−−今のように広告効果が重視されたのはいつ頃でしょうか?

鷹野:ようやく、90年代に入るとやみくもな広告出稿が疑問視され「広告を検証しなければならない」という言葉が囁かれはじめてきました。広告効果測定のためのシステムを構築したり、広告効果のシミュレーションをするという動きが見られ始めたのもちょうどその頃です。私も、I&S時代には、そのような仕事に携わっていました。どんな商品でも、買い手にどのようなメリットがあるかが明確になっていなければ売れるわけがありません。それまでの広告は、言わば「利回りを表示しない金融商品」のようなもの。ある意味、広告効果測定を実施することは当然の潮流といえます。

−−現在では、各広告代理店でも効果検証の実施が多く見受けられますね。

鷹野:確かに最近では、広告代理店による広告効果検証の動きが見られるようになってきました。しかし、これには注意が必要です。もちろん広告代理店側でもしっかりとした調査を行なっていますが、気になるのは「売り手がその商品を評価」している点です。プレイヤーとアンパイアが同じでは、はたしてどこまで公正で正確なジャッジができるでしょうか。そのような危惧を買い手である広告主側が抱くことも少なくなく、テムズのように中立的な立場からアドバイスをする機関が求められているんです。

 

■効果測定がテレビCMを救う

−−この20年間で、大きく時代は変わりました。インターネットも登場し、スマートフォンも当たり前に普及している。現在、テレビCMにはどのような役割が求められているのでしょうか?

鷹野:幅広くマスに知らしめるためには、テレビCMが圧倒的です。一つの媒体で、日本全国の7−8割の方に認知をしてもらうことができるメディアは他にはないでしょう。

−−認知効率という側面ですね。

鷹野:そうです。

−−では、そこからさらに一歩踏み込んだ「興味喚起」や「内容理解」さらには「実売」などの部分ではいかがでしょうか?

鷹野:それらの部分に関して言えば、以前と比べ弱くなってきている面は否めません。以前ならば視聴者が受け身で情報を享受するテレビのような受動媒体ばかりで、インターネットのような能動的に情報を求める媒体というものが少なかった。かつてならば、商品について深く理解をしてもらうためのシリーズCMなどがつくられていましたが、現在ならCMで理解をしてもらうよりもWebに誘引してしまったほうが効率がいいでしょう。その媒体の役割分担の組み合わせがクロスメディアといわれている手法なのです。

−−ネット広告に比較してテレビCMの優位性はどこにあると思いますか?

鷹野:テレビ広告には、自然とお茶の間に「ズケズケ」と上がり込んでしまうという特性があります。インターネットのように能動的に情報を得ようとしなくても、映像の動きと音で否応なしに視聴者の深層心理に忍び込んでしまうんです。これは、他の広告にはなかなか真似することができない効果でしょう。また、以前と比較するとやや効果は下がっていますが、消費者からの「テレビCMでオンエアしている」という信頼感もまだまだ有効ですね。

−−ただ、テレビ全体の視聴率も低下してきて、今や視聴率20%を超えるような番組もほとんどなくなってしまいました。テレビの影響力はどんどん弱くなる一方です。

鷹野:それに加えて、視聴していたとしても、ケータイやパソコンをいじりながらの「ながら視聴」が多く「視聴の質」も落ちているのが現状です。テムズでは、GRPに基づく認知率のシミュレーションを行なっているのですが、10年前に比べると、その到達効率は1割程度下がっています。認知率が高くなればなるほど、その伸びは鈍化していきますから、1割の認知率低下は、それをはるかに上回る出稿量で補わなければなりません。そのような状況にもかかわらず、在京キー局のテレビCMの媒体価格は10年前と比べわずかに低下している程度なんです。

−−媒体価値が下がっても、価格はほとんど維持されている。デフレ現象が叫ばれているにもかかわらず、実質上の値上げに等しい状態ですね。しかも媒体価値が、費用対効果として明確化されていないのでは広告主の“テレビ離れ”が進むのもやむを得ません。

鷹野:だからこそ、テレビCMの効果測定が必要なんです。効果検証をしっかりと行えば、いまだに圧倒的といえるテレビCMの影響力が明らかになります。厳しさに直面している今だからこそ、シビアな効果測定によって、媒体価値が見直されるのではないでしょうか。

……次回は、テレビCM効果測定の方法に迫ります!

【取材・文・写真 萩原雄太】

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