ストーリーで口説く統合コンテンツ論

IMC(統合型マーケティング)プランニングを専門的に実践するインテグレートにて、デジタルメディア・コンテンツの企画立案、編集、運営を行うメディアソリューション部が、デジタル時代の「コンテンツ」について語るコラム。情報が一方通行でなくなった今、魅力ある「コンテンツ」とはどういうものか、分析、探究していく。

株式会社インテグレート
メディアソリューション部

第1回:いよいよ明らかになった 広告を超える?コンテンツの威力

読者のみなさん、はじめまして。

 

私たちはIMC(統合型マーケティング)の専門プランニングブティックのインテグレートで、webメディアのコンテンツ企画立案、編集、メディア運営を行っているプランナー兼エディターチームです。

今回から、「ストーリーで口説く統合コンテンツ論」と題して、デジタル時代と言われるいま、求められるコンテンツとはどのようなものかを考えていきたいと思います。

 

インテグレートは、販売や集客、商品企画などマーケティング領域に特化し、 IMCの戦略設計からコミュニケーションの計画・実施までをワンストップで行っている会社です。当社の大きな特徴が、戦略設計段階において、消費者の購買行動を促すコンテンツを開発する「情報クリエイティブ」というプログラムを持っていることです。

 

デジタルテクノロジーの進化を目の当たりにし、新しいメディアやデバイスの登場が話題になったりすると、マーケッターはついつい新しい手法やメディアを試してみたいと考えがちですが、本当に大切なのは、顧客を動かすストーリーの切り口や題材がどこに潜んでいるかを探り当てることなのです。

 

マーケティングの現場をけん引する事業部門の責任者やブランド・マネージャーは、最近口々に「コンテンツ」の重要性を指摘しています。

なぜいま「コンテンツ」に注目が集まっているのか?

初回はいくつかのトピックスを紹介しながら、「コンテンツ」が今注目されるワケをお話しします。

 

 

■最新のアトリビューション分析で「編集コンテンツ」の効果を実証

 

今デジタルマーケティングの業界で「アトリビューション」というアプローチが非常に注目されています。

「コンバージョン(商品購入や資料請求などの最終成果)にいたったアクションそれぞれの貢献度」を把握するアトリビューション分析は、これまでは、ネット広告とコンバージョンの因果関係を探る事をメインに、主にペイド(Paid)メディアとオウンド(Owned)メディアの範囲の分析にとどまっていました。

しかし、ネット上の広告経由の直接的な反応を検証するだけでは、客観的で総合的な評価分析にはなりません。なぜならネット上にストックされ、流通しているコンテンツという観点から見れば、広告はそのごく一部に過ぎないからです。Web上にはオウンドメディア内のコンテンツ、さらにアーンド(Earned)メディア内の編集記事、ソーシャルメディアの投稿など膨大なコンテンツがあります。製品への理解促進などエンゲージメントの醸成という観点でみると、ターゲットとなる消費者に広告だけを単独で見せるよりも、最初に関連する記事やソーシャルメディアの推奨コメントを読ませた後で、広告に接触させる方がはるかに効果的である事は、容易に想像はできるものの、これまでこうした相乗効果の可視化は技術的にも難しくほとんど行われてきませんでした。

そんな中で最近ウェブメディア「現代ビジネス」上で展開されたアトリビューション分析は、広告だけでなく編集記事を分析対象にした事において、画期的なものでした。

現代ビジネスで行ったアトリビューション分析は、自社の編集コンテンツと広告を対象に金融商品(FX)のコンバーションにいたるまでのプロセスを追ったもので、予想を超える結果が出ました。

広告単独の直接コンバージョンが月平均5から10件だったのに対し、編集コンテンツを見た後の、検索経由などの迂回コンバージョンが月平均70から90件にものぼったのです。このことからも生活者を動かすには、コンテンツや文脈などのストーリーが重要だということがわかります。

今回のこのケースでは、これまでなかなか測定ができなかった編集コンテンツの効果を可視化するというチャレンジの中で、改めて編集記事というコンテンツのパワーが実証されました。今後は今回の様なアプローチで、ソーシャルメディア、編集コンテンツなどのアーンドメディアも組み入れたIMCのプランニングの設計がますます進むことは間違いありません。

 

 

■広告やPR、イベントの枠に捉われない「ブランデッド・コンテンツ」が主流に

 

アーンドメディアである編集記事コンテンツへのプロモートとしてメディアの制作方針に合わせて、メディアが取り上げやすいネタを提供し、露出を獲得していくのは、PRというソリューションの主要業務です。ここ数年、マーケティングの業界では「戦略PR」という言葉がよく使われるようになってきました。TVや新聞などのマスメディアへの働きがけによって、製品の販売を後押しするような“空気づくり”をするのが戦略PRの役割です。しかし、こうした方法は、カテゴリーシェアの高いブランドでは有効に機能しますが、多くのブランドはそれだけで自社の製品理解へつなげるには難しいのが正直なところです。戦略PRの限界も指摘され始めています。

また、製品の持つ「機能性価値」を、中立・公正な第三者機関発で訴求するPRの手法も、マーケティングの課題解決という視点で見ると、非常に限定的なもので、すべてに応用できるわけではありません。

そんな中、マーケッターの間で今注目されているのが「ブランデッド・コンテンツ(Branded Contents)」という考え方です。広告の形はしていないけれど、ブランドのメッセージを伝えたり、広めたりする機能を果たしている一連の活動のことを包括的に指す言葉で、広告やPR、イベントという方法論にとらわれずに、ブランドの世界観を消費者にいかにして体感してもらうかがポイントとなります。これまでの「awareness(認知)」=ブランドの認知を高めるコミュニケーションではなく、「experience(体験)」=ブランドの世界観を体験してもらうことを重視するコミュニケーションに注目が集まっているということです。デジタル領域の進歩により、情報が一過性のフローではなく、ストック(蓄積)されるようになる中で、ブランデッド・コンテンツは、オウンドメディアを中心としてアーカイブされるストック型コンテンツの特徴も備えています。

ちなみに、今年のカンヌライオンズの大きなトピックスの一つとして、「モバイルライオンズ(MOBILE LIONS)」と「ブランデッドコンテンツ・アンド・エンターテイメントライオンズ(BRANDED CONTENT & ENTERTAINMENT LIONS)」の2部門の新設があります。「ブランデッド・コンテンツ」を冠した新しい部門の創設は、世界のマーケティングの潮流を象徴していると誰もが納得したところでした。

 

 

■「読者参加型のコンテンツ」で波及力を高める

 

また、デジタル領域におけるコンテンツの最近の大きな潮流の一つとして「読者参加型のコンテンツ」があります。

デジタルメディアのインタラクティブ性やソーシャルメディアの急速な浸透で、生活者は情報の受け手であると同時に情報の発信者ともなっています。

アメリカでは、読者参加型のコンテンツ制作によって成功を収めたWebメディアのケースが目立っています。

一個人の政治ブログからスタートし、いまや新聞社サイトと並ぶ存在になった「ハフィントン・ポスト(The Huffington Post)」は、読者参加型のコンテンツ制作という点で特色があり、非常に参考になります。

「ハフィントン・ポスト」は、社外寄稿者を積極的に登用し、読者の支持を得ています。

フリーランスのジャーナリスト、ライターから、政治家、ミュージシャン、映画俳優などのセレブリティ、著名ブロガーなどセミプロの人々、そして読者ライターまで、社外寄稿者をテーマに応じて登用しながら、高品質のコンテンツを提供している点が成功につながったと推察されます。

また、ユーザーや読者を巻き込むことによってコンテンツの波及力を高めていく試みも、成功要因の1つではないでしょうか。

以上のように、これまでの広告を中心としたクリエイティブ至上主義から、コンテンツを中心においたマーケティングに大きな流れが傾いている中で、「ストーリー・テリング」(Story telling)というコンセプトがブランドと消費者のエンゲージメントを深めていく重要な考え方として今改めて着目されています。

 

 

■「ストーリー・テリング」がマーケティング戦略上のキーコンセプトに

 

「ストーリー・テリング」にも様々なレベルがあります。大半の広告クリエイティブに見られるように、キャラクター設定や表現手法によって製品の魅力を引き出すコミュニケーション上の「ストーリー・テリング」が多いものの、自社の製品やビジネスを創出していく事業活動そのものを「ストーリー・テリング」というアプローチを用いて具体化していくのもマーケティングの重要なテーマとなってきました。

「ストーリー・テリング」とは製品やサービスが生活者にもたらす価値を、社会の動向や生活者の価値観との整合性を取りながら、新しいコンテクスト(文脈)で捉え直す作業にほかなりません。そういう意味で「ストーリー・テリング」は、製品やサービスの送り手である企業と生活者が共同で作り上げる新たな物語といえるでしょう。デジタルのインタラクティブ性や参加性が「ストーリー・テリング」にも生かされています。

 

次回以降、「編集コンテンツのアトリビューション」「ブランデッド・コンテンツ」「読者参加型のコンテンツ制作」「ストーリー・テリング」などのキーワードをさらに深掘りしながら「デジタル時代のコンテンツの作り方」について語っていきたいと思います。

 

株式会社インテグレート
メディアソリューション部

 

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