電通の海外子会社カラ、世界の広告費成長率を予測

電通の海外子会社でメディア・コミュニケーション・エージェンシーであるCarat(カラ)は、年に2回(3月と9月)、全世界59地域から収集したデータを基に、世界の広告費成長率予測を行っており、この度2015年3月に公表した2015年と2016年の成長率について改定した。それによれば、2015年の世界の広告市場は前年比4.0%増の5,290億ドルを予測(前回予測は4.6%増の5,400億ドル)。2016年にはさらに約250億ドル増加の同4.7%増加(同5.0%増)するとみられている。
日本の広告市場は、2015年が前年比1.4%増(前回予測は0.9%増)、2016年が同1.6%増(同1.2%増)、デジタルシフトがさらに加速し、世界の広告市場に占めるデジタル広告費の構成比率は、2015年に24.3%(前回予測は23.9%)、2016年に26.5%(同25.9%)になるという。

【主なポイント】
◆2015年の世界の広告費成長率(2015年3月時予測の改定)
・2015年の世界の広告市場は、2015年3月予測の4.6%増からわずかに下方修正。主な要因は、最近の中国とロシアにおける経済の減速によるもの。その結果、2015年の世界の広告費は5,290億ドル(前回予測は5,400億ドル)へ。また2016年には4.7%の成長が見込まれ、さらに約250億ドル増加するとみている。

・7つの対象媒体で算出される世界の広告市場では、テレビが最大のシェアを占め、2015年に42.0%(前回予測は42.2%)、2016年に41.3%(同41.7%)になると予測。一方、モバイルやオンラインビデオの支出増加などデジタルシフトの加速により、デジタル広告費の構成比率は、2015年に24.3%(前回予測は23.9%)、2016年に26.5%(同25.9%)へと伸長すると予測。

・地域別にみると、2015年の世界の広告市場は世界的にポジティブであり、北米が4.2%増、西ヨーロッパが 2.6%増、アジアパシフィックが4.1%増、ラテンアメリカが12.7%増になる見通し。また2016年には、中央および東ヨーロッパを含むすべての地域がプラス成長になると予測。

・2015年の西ヨーロッパでは、ギリシャこそ政治的混乱により成長率が12%減になる見通しだが、市場規模の大きい英国やスペインの予測がそれぞれ6.4%増、 6.9%増と堅調なこともあり、ギリシャのマイナスを打ち消す状況にある。

・アジアパシフィックでは中国の景気減速による影響があるものの、インド市場の高い成長や堅調なオーストラリア市場による貢献に支えられ、地域全体は順調に拡大していくとみられている。

◆2016年の世界の広告費成長率(2015年3月時予測の改定)
・2016年の広告市場は、2015年3月の前回予測からは下方修正されたものの、世界的な経済成長への期待から、引き続き4.7%の成長を見込んでいる。この背景には、UEFA欧州サッカー選手権、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック、米国大統領選などの大型イベントが続くことがある。

・地域別にみると、北米は前回予測から微減したものの、引き続き4.5%と高い成長が見込めます。西ヨーロッパは、英国および回復基調にあるスペインの高い成長に加え、フランスが前回予測を上回る見通しになったことから、全体では2.9%増を見込んでいる。
また、中央および東ヨーロッパでは引き続き厳しい経済環境が続くとみられることから、前回予測の3.9%増を1.6%増へと下方修正している。アジアパシフィックは、持続する各国市場の高い伸びや上方修正された日本に加え、さらなる浮上が期待されるインドの貢献があるものの、世界第2位の広告市場である中国の伸びが前回予測を下回ることから、地域全体では5.8%増から4.7%増へと下方修正している。

【地域別内訳】

◆北米
・世界第1位の広告市場である米国は、2015年は4.3%増(前回予測は4.6%増)となる見通しで、2016年には大統領選やリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックによるキャンペーン効果に支えられて4.5%増(同4.7%増)になると予測している。下方修正となった要因は、米国では冬の大寒波が2015年上半期の個人消費を弱含みにしてしまったことが挙げられている。

・米国ではモバイルなどのデジタル広告が伸張しており、2018年にはデジタル広告費がテレビ広告費を追い抜く見通し。

・カナダの広告市場は、昨年は景気低迷の影響を受けて下落したが、2015年は緩やかな成長へと転じ、連邦議会選挙による効果も相まって2.5%増となり、2016年にも3.0%の成長が期待されている。

◆西ヨーロッパ
・2013年には0.6%減とマイナス成長となった西ヨーロッパは、2014年以降はプラス成長へと転換。2014年は2.8%増となり、2015年と2016年もそれぞれ2.6%増、2.9%増になるとみている。

・2015年のけん引役となる国は、スペイン、英国、アイルランド、ポルトガル。一方、ギリシャは回復への期待から前回予測では8.0%増を見込んでいたが、長引く政治的混乱による影響を踏まえ12.0%減へと大幅に下方修正。ギリシャ広告市場の回復は2016年になると予想している。

・英国の広告市場は2014年に7.9%増と高い伸びを示したが、2015年もラグビーのワールドカップ効果が期待されることから6.4%の成長を予測。また2016年には、UEFA欧州サッカー選手権、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックなどによる効果で、5.5%の成長が期待される。

・ドイツの広告市場は巡航速度の成長を続けている。2014年の1.5%増に続き、2015年は1.6%増、2016年も1.7%増を見込んでいる。

・フランスの広告市場は3年連続のマイナス成長が続いていたが、ようやく成長トレンドに入った。2015年上半期から堅調であることから、2015年、2016年ともに前回予測の成長率を上方修正している。

・スペインの広告市場は2015年に入り、これまではヨーロッパで最も高い成長率を誇っている。11月には総選挙も控えており、また消費動向も堅調なことから企業による広告支出も増加傾向にあり、2015年、2016年ともに6.9%の成長が期待されている。

◆中央および東ヨーロッパ(C&EE)
・C&EEにおける2015年の広告市場は、前回予測の2.2%減から6.0%減へと下方修正した。これは、主にロシア経済の低迷によるものだが、2016年には年半ばから回復に向かうとの見通しから、広告市場も1.6%のプラス成長になることが期待される。

・C&EEにおける第2、第3の広告市場であるポーランドとトルコは、それぞれ2015年と2016年に1桁台前半の成長率を示すと予想している。

◆アジアパシフィック
・アジアパシフィックは経済成長の減速の影響を受け、2015年、2016年ともに広告市場の成長率を下方修正した。とりわけ世界第2位の広告市場である中国のスローダウンが影響を与えている。また、アジアパシフィック14市場のうちインドネシア・香港・台湾・マレーシアを含む7市場では、世界の経済動向の影響もあり、2015年と2016年の成長率を前回予測から下方修正している。一方、インド、フィリピン、ベトナムは堅調な経済成長に支えられ、両国の広告市場は2015年、2016年ともに2桁の成長を示すと予想している。

・オーストラリアの広告市場は過去4年間は芳しくなかったが、経済が改善の兆しを見せていることから2015年にはプラス成長となり、2016年も順調に拡大する見通し。

・世界第3位の広告市場である日本については、前回予測では2015年に予定されていた消費税増税が2017年に延期になったことに伴い、駆け込み需要のない広告市場は弱含みになると予想していました。しかし、円安効果などもあって、2015年上半期の日本企業の業績が予想を超えて好調であったことから、広告市場は引き続き緩やかではあるものの、前回予測を上回るレベルで推移することが期待される。

◆ラテンアメリカ
・ラテンアメリカは2015年と2016年の成長見通しが最も高い地域。ブラジルの広告市場は2016年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの効果もあることから順調ではあるものの、ブラジル経済の減速感から、2015年の成長率については下方修正している。
・一方、インフレの影響で広告市場の成長率の上昇が予測されるアルゼンチンや、安定した経済成長が見込まれるコロンビア広告市場の上方修正などにより、ラテンアメリカ全体では2015年、2016年ともに2桁の成長が見込まれる。