広告費7700億円が1年で消えた!ネットが新聞を抜いたのではない?フリーペーパーが雑誌を抜く? ~日本の広告費2009から見る広告業界の今~

電通の発表した2009年の日本の広告費は、遂にネット広告が新聞広告を抜くなど、広告業界内でも注目を集めるニュースとなった。

ネット広告が新聞広告を抜いた事についても後ほど触れるが、それよりも、広告費の減少が止まらない事に対して危機感を覚えはしないだろうか。
2007年に7兆円あったはずの総広告費は、2008年に6兆7000億円、2009年は5兆円台になってしまっている。
広告費が2008年から7700億円も、この市場から消えてしまった事になる。
果たして、7700億円もの売上はどこから消えてしまったのか?

これだけの額の売上が消えて、広告業界への影響、業界で働く我々への影響がないはずがない。
果たして、広告業界では今何が起こっているのだろうか。

■マスコミ4媒体はいくら失ったのか?

広告の中で最も落ち込みが激しいと言われているマス4媒体だが、具体的には昨年からどの程度広告費が消えたのか?
前年との減少額を比較する。

テレビ 1953億円減少
新聞 1537億円減少
雑誌 1044億円減少
ラジオ 179億円減少

マス4媒体だけで合計4713億円の減少と、消えた7700億円の6割を占めている。

2008年と2009年の減少額をグラフ化した。
テレビの広告費が全広告媒体中飛び抜けて大きいため、減少額が最も多い。
一方、今回は新聞の広告減に注目が集まっているが、対前年比でもっとも落ち込んだのは、雑誌の25.6%減だった。

■販促媒体も打撃を受けたが・・・

マス4媒体だけでなく、プロモーションメディア(販促媒体)についても同様に打撃を受けている。
ところが、広告費が大きいテレビを除いたマス媒体と、プロモーションメディア、ネットの広告費を比較した結果、別の事実が見えてきた。

新聞は広告費減少幅が際立って大きく、販促媒体に埋もれようとしている。
次に雑誌広告が、既に屋外広告やDMなどの販促媒体よりも小さな市場になってしまっている事が分かる。
売上規模ではもう、あえて「4媒体」として区別する必要がないほど広告費の差がなくなっていると言える。

■ネットが新聞を抜いたのではなく、新聞がネット以下に落ちた

遂にインターネット広告が新聞広告を抜いた!というセンセーショナルなニュース記事が並んだが、このグラフを見るとあまり明るいニュースとは言えない。

ネットが新聞を抜いた、というよりも、新聞の落ち込みが大きすぎて前年比横ばいのネットの広告費を突き抜けて落ちてしまったように見える。
実際に、ネット広告業界で業績をのばしている企業は一部企業に偏っており、多くの人にとってはネット広告業界好調の実感がわかないのが現実だ。

■雑誌広告費が、フリーペーパー/フリーマガジンと並ぶ!?

ネットと新聞だけではない。
書店で販売している雑誌と、ラックや手配りなどで無料配布されているフリーペーパーの広告費が、気づけば僅か153億円の差しかなくなっている。

グラフから見て取れるように、こちらも決して明るいニュースではなく、低迷が続くフリーペーパー広告よりも早いスピードで雑誌広告が縮小している、という結果だ。
宝島社をはじめとする付録つきの女性誌や、ブランドムックが部数を伸ばしているが、「エスクァイア日本版」「小学5年生」「小学6年生」「PINKY」などが次々休刊するなど、大型の休刊が相次ぎ、2010年も一部雑誌を除いたこうした傾向は続くと見られている。

今回、発表された数字を少し角度を変えて見てみた。
各メディアがそれぞれ、今回の発表を報じているが、広告業界の状況は相当深刻だ。
7700億円もの広告費がたった1年で市場から消えてしまった。
広告業界で働く我々にも影響がないはずがない。
幸いにして、2009年は広告代理店や、媒体社の倒産や大規模なリストラのニュースはそれほど多くはなかったが、果たして2010年はどうなるのだろうか。
(杉山)